先生が、両親にそう告げたのを、影でこっそり聞いていた。
お母さんはしゃっくりが止まらなくなり、お父さんも必死に鼻を啜っている。
ああ、これはまず、私に今すぐ伝える様子はないな。
さっと、気づかれぬよう病室のベッドに戻る。
そっか、やっぱり、死ぬんだ。
悲しくはなかった。
生まれつき体が弱いから、小1の時からずっと入院してて、当然両親にもいろんな人に迷惑かけてるし、
でもなにより、退屈で仕方ないのだ。
そろそろ終わっても、良かったのかもしれない。
そう思うと、何だか気が軽くなった。
窓の外を見て思った。
今は雪が降っているけど、あの舞い落ちる桜の花びらを思い浮かべると、彼が映った。
ああ、心残りは、これなんだ、と自覚した。
でも、叶わないだろう。
涙が無意識にこぼれていく。
___いつのまにか、寝ていたらしい。
目を開いたのは、桜の見える窓から、強い優しい風が吹いた夜中だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。