前の話
一覧へ
次の話

第1話

#00 余命4ヶ月
133
2022/01/10 15:58
結月ゆづきさんの余命は、___4ヶ月です。
先生が、両親にそう告げたのを、影でこっそり聞いていた。
お母さんはしゃっくりが止まらなくなり、お父さんも必死に鼻を啜っている。
ああ、これはまず、私に今すぐ伝える様子はないな。
さっと、気づかれぬよう病室のベッドに戻る。
そっか、やっぱり、死ぬんだ。
悲しくはなかった。
生まれつき体が弱いから、小1の時からずっと入院してて、当然両親にもいろんな人に迷惑かけてるし、
でもなにより、退屈で仕方ないのだ。
そろそろ終わっても、良かったのかもしれない。
そう思うと、何だか気が軽くなった。
結月
結月
4ヶ月先は___春、か。
窓の外を見て思った。
今は雪が降っているけど、あの舞い落ちる桜の花びらを思い浮かべると、彼が映った。
結月
結月
......二人で見るって、約束してたのにな......。
ああ、心残りは、これなんだ、と自覚した。
でも、叶わないだろう。
涙が無意識にこぼれていく。



___いつのまにか、寝ていたらしい。
目を開いたのは、桜の見える窓から、強い優しい風が吹いた夜中だった。

プリ小説オーディオドラマ