いつのまにか大晦日になった。
最期が迫ってくると、時は早く感じるのだろうか。
だが、実感がわかないから、ただいつも通り退屈な日々で。
両親はというと、明日お見舞いに来てくれるらしい。
前みたいに先生が呼び出す時などしか滅多に来てくれない。
そもそも家からこの病院は遠いし、仕方ないのだが。
やっぱり、一人は寂しい。
こうやって、話す相手がいるだけで、今までとは違うんだ。
そう言った瞬間、死神君は、なにかを思い出すように宙に目をやった。
死神君は言ってから、あ、というような顔をしたような気がした。
どういう意味の表情かは分かんないけど。
......ほんとは......
......まあ、彼のことを死神君に言ったって、かえって寂しくなるだけだ。
なぜか、死神君はフードの奥で、悲しさとほっとするのとが混ざったような表情をした。
その表情をさせたくなくて、わざと、言ってみた。
いつも通り、でも少し微笑んでくれた。
時計をみると、長い針が一刻一刻と12に迫っていて、あと1分もないようだ。
その瞬間、長い針は、12ぴったりで、短い針と重なった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。