第5話

#04 今年最後の夜
52
2022/01/12 08:24
いつのまにか大晦日になった。
最期が迫ってくると、時は早く感じるのだろうか。
だが、実感がわかないから、ただいつも通り退屈な日々で。
両親はというと、明日お見舞いに来てくれるらしい。
前みたいに先生が呼び出す時などしか滅多に来てくれない。
そもそも家からこの病院は遠いし、仕方ないのだが。
やっぱり、一人は寂しい。
結月
結月
でも、今では死神君がいる。
死神君
死神君
......そうだけど、他にいないの、親しい人とか。
結月
結月
ぼ、ぼっちだってからかいたいの?
死神君
死神君
いや、そうじゃなくて.....
結月
結月
さすがに、9年間病院で暮らしてて、ともだちできないはずないよっ!
死神君
死神君
......まあ、ありえるひとはありえるけど......
結月
結月
なんか言った?
死神君
死神君
いや、。
こうやって、話す相手がいるだけで、今までとは違うんだ。
結月
結月
......会ってみたい?瑠菜るなちゃん。
まあ、10くらい下なんだけど....。
そう言った瞬間、死神君は、なにかを思い出すように宙に目をやった。
結月
結月
.....どうしたの?
死神君
死神君
瑠菜、どこかで名前をみたことが....
......まあ、いっか。
死神君
死神君
とりあえず、君の友達なんだね。
結月
結月
うん。
結月
結月
年離れてるけど。
死神君
死神君
......唯一の?
死神君は言ってから、あ、というような顔をしたような気がした。
どういう意味の表情かは分かんないけど。
結月
結月
......
......ほんとは......
......まあ、彼のことを死神君に言ったって、かえって寂しくなるだけだ。
結月
結月
......うん。
死神君
死神君
......そっか。
なぜか、死神君はフードの奥で、悲しさとほっとするのとが混ざったような表情をした。
結月
結月
もしかして、ばかにしてる?
その表情をさせたくなくて、わざと、言ってみた。
死神君
死神君
いや、そういうことじゃ。
いつも通り、でも少し微笑んでくれた。
死神君
死神君
それより、年明けるよ?
時計をみると、長い針が一刻一刻と12に迫っていて、あと1分もないようだ。
結月
結月
うん、そうだね、でも、今年は一人の年越しじゃない。
死神君
死神君
......ずっと、一人だったんだね。
結月
結月
......この望みを叶えてくれて嬉しかった。
死神君
死神君
......実はね、あと2つ叶えられるんだ。
結月
結月
......はっ!?
その瞬間、長い針は、12ぴったりで、短い針と重なった。

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