第4話

気高き貴方に花束を
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2026/01/11 10:32 更新



俺が固まったまま動けないでいると

へにょりと眉毛を下げたまっさんが


正「びっくりさせてごめんな、?」

正「とりあえず上がって?」


なんて言いながら誠也くんを抱き上げた。



にゃ



お前も来い、そう言われた気がして

大人しくまっさんの部屋の床に座る。



小「それで…あの…」

正「せやな、説明せんと」

正「誠也くん、」



そう言ってまっさんは

誠也くんの頭をぽんぽんぽん、と3回撫でた。



ぽふっ



誠「ん、なに」

正「誠也くん、ほら、挨拶」

誠「…めんどい」

正「今日は変わっちゃだめって言ったでしょ?」

誠「聞いてないですねー」

正「言いました!」

誠「…けっ」



開いた口が塞がらない。

え、何この状況。



正「えっと、まず説明やんな、」

正「この子は誠也くん、」

正「なんでかは知らんけど」

正「猫と人間を行ったり来たりできるんやって、」

誠「猫と人間も同時にできる」



ドヤ顔をかまされたかと思ったら

ぽふっ、という音と共に、

誠也くんに猫の耳と尻尾が生えた。



誠「すごいやろ、むふ」

誠「にゃあ」

正「押し倒すよ」

誠「やめろ」



可愛い。どうしよう。ものすごく可愛い。

ぺちぺちと尻尾をソファに打ち付ける誠也くん。

耳がぴょこぴょこ動いて可愛い。



小「誠也くん、」

誠「なんや」

小「かわいい…」

誠「当たり前やろ、猫なんやから」

小「それもそうだけど!」

小「人間のときの誠也くんも、可愛い、」

誠「…ふーん」

誠「もういい?戻って」

正「ええよ、」

誠「あれ取ってこい」

正「誠也くんほんと猫じゃらし好きねぇ」

誠「猫やもん」



まっさんがソファから立ち上がって歩いていく。

見つめ合う俺ら。

その間にも誠也くんの耳はぴょこぴょこしてるし

尻尾は左右に動いていて可愛い。可愛すぎる。



小「あの、誠也くん、」

誠「お前、名前、何」

小「え?」

誠「名前」

誠「何」

誠「俺猫になってるとき言葉わからんのよ」

誠「人間のときはわかんねんけど」

誠「猫のときはふわふわして聞こえへんの」

誠「飼い主お前のことなんて言ってたっけ?」

小「小島、小島健、」

小「まっさんには健ちゃんって呼ばれてる、」

誠「ふーん飼い主の友達ね」

小「自己紹介した意味ある?それ、笑」

誠「じゃあ、小島」

小「呼んでくれるの?」

誠「ん、」

誠「小島でええわ、」

正「誠也くーん、はい、猫じゃ」

誠「んにゃっ」

正「早っ」



ぽふっ、という音を響かせて

誠也くんは猫の姿に戻った。



小「可愛い、な、」

正「せやろー?」



猫じゃらしと戯れる誠也くんを

愛おしいものを見る目で見つめながら

器用に猫じゃらしを揺らすまっさん。



小「てかまっさん飼い主って呼ばれてんの?」

正「そう!そうなんよ!」

正「名前で呼んでって言ってんねんけどなぁ」

正「飼い主呼びも可愛いからええけど」

小「俺小島って呼んでもらえた」

正「ええっ?!」

正「誰に?!」

小「まっさんに勝った」

正「もぉ…いいなぁ…」






何、話してんねやろな、

猫になってるとき、

俺にはさっきまで聞き取れていた日本語が

どうも靄がかかったように聞こえて

話していることはわかるけど

何を話しているかまではわからない。


小島健。


初めて見たとき、

あいつの纏う空気が優しかった。

それは今も同じで。

いいなぁ、飼い主。

ずっとにこにこしてる。

小島と話すの楽しいんやな。

いいな。

俺にだって、

なんで人間と猫を行ったり来たりできるのかなんて

全くわからない。

でも、そんな変な俺を受け入れてくれたのは

これまでもこれからも

飼い主一人だけだと思ってた。

でも、小島も受け入れてくれた。

ねえ、もっとここ来てよ。

一緒に遊んでよ。

俺、ずっと猫のままでいるから。

可愛い猫になり続けるから。

人間になんてならないから。

素直でいれない、可愛くない人間には戻らないから。



なんて考えは、

飼い主の巧みな猫じゃらしの扱いに

まんまとはまって抜け出せない

俺のふわふわな頭からは

するりと、消えていった。

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