ダンダンダンダンダン!
扉が揺れるほど、強く叩かれる。
せっかく気持ちよく寝ていたというのに・・・。
部屋に響く不穏な音に布団からはね起きて、叫ぶ。
扉を開けて賜瘰と対面する。思いため息をついた。
初めての出勤に大遅刻してから、皇帝から毎回の迎えに彼付きの宦官である賜瘰が迎えとして、送られてくる。それは例え、紫水が国最大級の広さを誇る後宮のどこにいてもいつの間にか、後ろにひかえている。
あんたは幽鬼か、と毎回ツッコミたくなる紫水であった。
賜瘰は目を丸くして、キョトンとする。
これがまた、賜瘰はかなりの美形で首を傾げる仕草も様になっているのが、寝起きの紫水にはカチンとくるのだ。
淡々と言って、音をならして扉を閉めた。
ーーー
二人は皇帝の部屋へと続く、後宮の中を歩いていた。そこは左右が開けており、朝の光を浴びて輝く植物たちを見ることが出来る。
それを見れば、全ての人々は爽やかな気持ちになるだろう。が、紫水にとっては眩しい光が眠気をさらに引き立てるだけだった。
溜瘰はため息をついた。
ふーん、と適当に相槌をうって、紫水は外の庭園に目を向けた。
青々と茂った柳の木が風に揺れている。
それを見ていると、木の下に太陽の光を受けて何かが光った。
急に立ち止まった紫水に賜瘰が声をかけた。
そう呟いて、紫水は庭園に降りていった。
何かが光った方に歩いていくと、それはあった。
思わず感嘆の声を漏らす。
そこにあったのは金色の簪(かんざし)だった。太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。端には丸い金細工と真っ白な牡丹一華がついており、決して色合いは派手でないが人の目を引く簪だ。
いつの間にか後ろに来ていた賜瘰が紫水の手を見た。
紫水は頷いて、懐から手巾を取り出して簪を包んだ。
そして、賜瘰の後に続いて皇帝の部屋へと足を進めたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。