3ヶ月前、鬼殺隊が何千年と追い続けていた鬼の始祖、鬼舞辻無惨を討った
それによる鬼殺隊の被害は大きく、ほとんどの隊士が、その命を燃やし尽くしてしまいました
ここ最近、"最後"という言葉を良く聞きます
ですが、同じ言葉でも意味は全く違う
嬉しいに繋がる最後
悲しいに繋がる最後
全員が隊服を身につけ、身だしなみを整えると、私たちが最も尊敬すべきお方のいらっしゃる元へ向かう
こうして、この服を来てそこに行くのも、最後なのでしょうね..
そう思うと、やはり寂しいものなのです
幼いながらも跡を継ぎ、鬼殺隊を導いてくださった御館様
その口からも、最後という言葉が放たれる
その後に呼ばれるはずだった仲間達の名は、呼ばれることがなかった
御館様のお声は、先代の御館様、耀哉様とはまた違って綺麗なお声で、とても...心に伝わるものでした
鬼は討った。もう、鬼殺隊の役目は果たした
これは正しい判断なのです
だから、いつも御館様に応えるための言葉に
感謝の気持ちと、これからの人生への気持ちを込めた
輝利哉様は、額を畳につけ、お礼の言葉を私たち鬼殺隊に仰った
輝利哉様やくいな様、かたな様の瞳からは、大粒の涙がこぼれ落ちていた
全てが、今ここで終わったこと
辛さが、認められたこと
優しさに触れることが、できたこと
全てを心に受け止めたからこそ、心のままに泣くことができたのですよね
この時、私たち3人は向き合い、笑い合った
一面に笑顔を咲かせ、微笑みではなく、本当の笑顔というものを
心からの笑顔というものは、とても暖かくて、心地が良くて...
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全ての事が終わり、自分の屋敷に戻る
誰もいないだろう、と、屋敷の中を歩く
私は本当に幸せ者です..
とてもお優しい方に恵まれ、囲まれ..
本当に、本当に..感謝しきれませんね
私も、受けた優しさをたくさんの人々に届けることができるよう、頑張らなくてはなのです
水無月さんの手に乗せられた1つの服
その服に包まれ、私は鬼と戦った
ですが、もう戦う必要はありません故
苦しみの証は、残したくは無いですからね
水無月さんからとあるものを受け取ると、私は廊下を駆け足で移動し、不死川さんの元へ向かった
これから、不死川さんとお買い物に行くのです!
まだ、あのお約束を覚えていてくださったので..😳
私たちは少し離れた街に向かい、とあるお店に入った
そこは綺麗な着物がたくさん置かれたお店で、見るだけでも分かるようなお高いお店でした
私が入るのを少し躊躇っていると、不死川さんは「早く入れよォ」と、優しく言ってくださった
その後、不死川さんはじっくりと着物を見て周り、時間をかけて、1つの着物を選んでくださいました
着物を選ぶ不死川さんの表情はとても真剣でした
以前まではその眼差しを忌々しい相手に向けていたのだと考えると、本当に..暮らしのあれこれが変わってしまったのだと実感しました
バサッと布を捲り、不死川さんの元に出る
不死川さんが選んでくださった着物は
淡い緑に、桜の模様があしらわれたとても綺麗な着物でした
流れるように付けられた白色の模様は、まるで風を錯覚させ、本当に綺麗なのです
それに、この着物は、私の羽織りにもとても合うのです
結んでいた髪を解くと、ストンと髪が肩に落ちた
少し手でまとめると、もう一度髪を結った
だけど、いつものお団子ではなく、私は上の髪を少し掬い、下の髪を残してさっと結った
結い終わると共に、風が緩く吹き、髪や着物が軽く揺れた
街を出ると、不死川さんの隣を歩き、その場所まで歩いた
その間も、たくさんお話をした
近所の猫が最近太ってきたことや
通いつめているおはぎのお店のおば様にお孫さんが産まれたことや
桜の蕾がだんだんと膨らんできて、そろそろ咲きそうなことなど..
とてもほんわかとしたお話を
私はそんな不死川さんの言葉をそのまま流してしまいそうな程、丘を埋め尽くすお花に魅了されていた
不死川さんは、とても自然に、そう言った
その時のお声は、力強くもしなやかで..私の、大好きなお声でした
その命が直ぐに尽きてしまうのだとしても、その後も私はあなたの傍にいたいのです
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パタッと一冊の本が閉じられ、この物語は終了した
果たしてこれは誰かが描いた空想のストーリーなのか
本当のお話なのか
それは定かではないようですよ^^
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「柱の私」
柱となった優春の、春のように優しいお話。
今ここに、幕を下ろす
つづく
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。