第20話

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2020/02/02 15:48
まあ、自分には少し薄れて見えるから鬼の場所はバッチリ把握してる
立ちすくんでいる鬼を全部斬り終わって、霧を晴らす
『終わった~~~~~~』
すると獪岳が、木の影から出てきた
獪岳「…終わったか」
『エ??本体はいつ斬り終わったんですか??』
獪岳「…霧が立ち込める前に」
『大分前ですね?!なんで助太刀してくんないんですか!まあ大丈夫ですけど!』
獪岳はそっぽ向いてしまう
『(エエエ~~~~~~)』
獪岳「…獪岳だ」
ぽつりと小さな声で言う
『知ってますけど』
獪岳「ちげえ!!名前で呼べって言ってんだこの!!」
エッ??
思いもよらない返答に身体が硬直した
か、獪岳クゥンの名前を呼んでいいだって…?!
そりゃあもう是非呼ばせて頂きます
『獪岳くん』
獪岳「…埋葬するからお前もやれ」
『はい!』
なんだか、少し仲良くなれた気がした
その後は、山積みにされた人達の死体を二人で穴を掘って埋葬し、手を合わせた
『…おやすみなさい』
獪岳「降りるぞ」
『はい!』


『あ~太陽が身に染みる』
日が昇ってきて、私達を朝日が照らす
獪岳くんは何言ってんだみたいな顔で此方を見る
獪岳「…」
『なんですかその顔』
獪岳「…お前、何か変だな」
ボソッと呟いた声を私は聞き逃さなかった
『??!!! エッ…顔が、ってことですか?』
獪岳「違ぇよ」
『スンマセン』
すると静かな朝に腹の虫が鳴った
『…………………』
獪岳くんは此方を見て ぷッ と笑い出した
獪岳「ぷッ、それでも女か?」
『!! 酷いけど、やっと笑いましたね?!』
獪岳「お前と居たら、嫌でも笑うぜ」
『どういう事ですかね本当』
獪岳「…朝餉食うか」
『あさげ…朝ご飯か! それなら、丁度握り過ぎたおにぎりありますよ』
懐から六つのおにぎりを取り出す
獪岳「お前…やけに羽織の左胸だけ出てるなと思ったんだが、握り飯だったんだな」
『ファッ?! 獪岳くんあんな顔しといてそんなこと思ってたんですか?!!!』
あんな 俺はお前の事が気に入らない みたいな顔をしてたのに?!
人って侮れない…コワ…
すると獪岳くんがまだやっていないであろう甘味処の外の椅子を指さした
獪岳「座るぞ」
『良いの?』
獪岳「座るくらいなら良いだろ(適当)」
『適当ですね?!』
布が被せられている椅子に腰掛け、包みを開く
『おにぎりあげますよ』
私はおにぎりを一つ手に取って口に運んだ
『ングッ…ブッ…塩振りすぎた…』
クソ、濃い味が好きだからってかけすぎた…!
これじゃあ塩分過多で死ぬ!
獪岳「…そうか? 俺はこれくらいが丁度良い」
『エッ? 獪岳くん、塩分過多で死にますよ』
獪岳「塩分過多…なら先生も危ないな」
((そういうことにしといて))
『先生…(桑島さんか)』
先生について聞くと、獪岳くんは少し複雑な顔になった
獪岳「チッ…先生もあんなカスと俺を二人で後継にするとか…!!」
『…大変なんだね、何かあったら言ってよ! おにぎり食べながら聞くし』
獪岳「お前急に敬語を外すな」
『そこっスか…スイマセン』
そう言うと獪岳くんはおにぎり二つ目を手に取って話し始めた
獪岳「…俺は陸の型ある内の壱の型だけ使えねェ」
『そうなのか…』
獪岳「…壱の型は、基本の型だってのに、」
黙って頷けば、獪岳くんは唇を噛んだ
獪岳「あのッ、あのカスに使えて!!何で!!俺には使えないんだ…ッ」
…そんなこと思ってたんだ
アッチの世界で獪岳くんの事、ちょっと…いや大分性格ひん曲がってるなとか思ったけど
良い奴じゃんか
『…壱の型使えても使えなくてもどっちでも良いじゃん』
獪岳「!!」
『呼吸が使えない訳でもないし、壱の型使えないからって刀が振るえない訳でもない!』
獪岳くんの私のことを目を見開いて凝視する
獪岳「…俺は、壱の型使えなくても、大丈夫なの、か?」
『あったり前でしょ!? それに、弐の型から陸の型使えるのは獪岳くん自身の努力の賜物じゃん』
一息で言い終えた私を見て、肩の力が抜けたようにわらった
獪岳「……ありがとな」
『いいえ!』
おにぎりの最後の一口を食べようとしたら、誰かが通り過ぎた
刀が見えたから、鬼殺隊だろう
獪岳くんの方を見れば、知っている様だった
一瞬であ、先輩なのかな? と思った
_____次の言葉を耳にするまでは

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