第75話

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2023/03/11 12:35


宇髄「お~お~こっちも派手にやってんなぁ!」
『えっ』

上から声がしたと思えば、立っていた屋根が抜ける。えっ下に炭治郎が居るから上に来たのに意味ないじゃん!!

派手に登場できて満足なのか、隣には楽しそうな顔の宇髄さんがいた。

『宇髄さんが体重重いから私の計画が台無しになりました今!!!』
宇髄「失礼なヤツだなって…おいこれ竈門禰豆子じゃねーか、派手に鬼化が進んでやがる」
炭治郎「!?うっ!?あなたもっ…!?」
『宇髄さんが屋根壊したから上から落ちたの』
宇髄「御館様の前で大見得切ってたくせになんだこのていたらくは!」


暴れる禰豆子ちゃんを抑える炭治郎に向き合って、肝心の堕姫に背を向けてしゃがむ宇髄さん。

あー…このシーンカッコイイから好きなんだよなぁ。

一応私だけでも、なんて思いながら微妙に頚がズレた堕姫に目を向けた。

堕姫「!!柱ね、そっちから来たの!手間が省けた…」
宇髄「うるせぇな、お前と話してねーよ。失せろ。

お前上弦の鬼じゃねぇだろ、弱すぎなんだよ。
俺が探ってたのはお前じゃない」

ズルッとずり落ちた堕姫の頭は手の中にしっかりと抱きとめられた。そのまま堕姫は座り込んだまま唖然としている。

とりあえず私は宇髄さんの顔を見つめておこう。

宇髄「おい戦いはまだ終わってねぇぞ、妹をどうにかしろ!」
炭治郎「!!」
禰豆子「グアアア!!」
炭治郎「禰豆子!」
宇髄「ぐずり出すような馬鹿ガキは戦いの場にはいらねぇ。地味に子守り唄でも歌ってやれや」
『炭治郎危ない!』

禰豆子ちゃんが床を蹴った弾みで炭治郎もろとも下に落ちていってしまった。

下から炭治郎の咳き込む声が聞こえる。

炭治郎「禰豆…子…!!」

(──だめだ、俺の声が届かない。全然聞いてくれないよ…どうしよう母さん…
『続きは炭治郎が歌うんだよ』
「子守り唄でも歌ってやれ」)




『まっ待って宇髄さんどこ行くの!!』

おっとこれは堕姫のセリフでは??なんで私が言ってるんだよ、堕姫お前いつまで放心してんだ仕事しろ(怒)

窓から乗り出してもう既にどこかへ行ってしまいそうな宇髄さんの腰を掴んで必死に止める。


宇髄「どこってこの鬼が本命じゃねェとなると、違うとこ探すだろ」
『いやココに本命いますから!!』
宇髄「ハァ?いつからお前の目は節穴になったんだよ」
『そうじゃなくて!!』
堕姫「よ…よくもアタシの頚を斬ったわね!!!ただじゃおかないから!!ふざけんじゃないよ!!
だいたいその女も気に入らないし、アンタさっきアタシが上弦じゃないとか言ったわね!!」
宇髄「だってお前上弦じゃねぇじゃん」
堕姫「アタシは上弦の陸よ!!」
宇髄「だったら何で頚斬られてんだよ、弱すぎだろ。脳味噌爆発してんのか」
『多分ダチョウより小さい』
宇髄「それは馬鹿にしすぎだろ」
堕姫「アタシはまだ負けてないからね!!上弦なんだから!!」
宇髄「負けてるだろ一目瞭然に」
『(爆笑)』
宇髄「お前チャチャ入れるのうめえな」
堕姫「アタシ本当に強いのよ今はまだ陸だけどこれからもっと強くなって…」
宇髄「説得力ね── ……!?」

この次って確か堕姫が大泣きして、妓夫太郎呼ぶんだっけ…えっと妓夫太郎って背中から出てくるんだよね、もしかして増えたりする?

………も、物は試し…やってみるしかない!

宇髄さんが馬鹿にした瞬間、私は堕姫に向かって技を繰り出していた。

『壁の呼吸 陸の型 狂い碧』
堕姫「!」
宇髄「そんな鬼斬ったって地味に意味ねぇぞ!」

頚と違って比較的簡単に斬れる身体。

再生が間に合わないようにただひたすらに斬撃を繰り返している。

そんな私を見た宇髄さんは何を考えたのか、じっと私を見ているだけだ。

堕姫「な、何よアンタ…!!
うぅっ…死ねっ!!死ねっ!!みんな死ねっ!!わぁあああああコイツも邪魔くさいしぃ頚も斬られちゃったぁお兄ちゃああん!!」
『ッ宇髄さん!!!!』

バラバラにしたはずの身体が瞬時に原型を取り戻して、横たわった堕姫の身体から妓夫太郎が出てきた。

その瞬間、身体が硬直した。猗窩座とは違う、また別の何か。

凄まじいこの気配…すぐに宇髄さんが私の横を通って攻撃するのと同時に、私は神経を研ぎ澄ませ振り向く。

『(そう何発も同じ日に出ない気もするけど)
碧の呼吸 漆の型 透明碧の嘘 』
宇髄「(頚を斬られても死ななかった、それにあなたが身体を斬り刻んでた理由はコレか。
背中から出てきたもう一体は何だ!?反射速度が比じゃねぇ!)」
妓夫太郎「あの女…空振りかァ…?
泣いてたってしょうがねぇからなああ、頚くらい自分でくっつけろよなぁ…おめぇは本当に頭が足りねぇなあ」

妓夫太郎が本来はヤケドした堕姫の顔を拭うんだけど、禰豆子ちゃん火使ってないからなぁ…
そのシーンは今涙をゴシゴシ拭っているのに変わっている。

漆の型で何とか隙作りたい…とりあえず今の位置は何かとまずいので一旦距離をとる目的で宇髄さんの横に立つ。

宇髄「…」
妓夫太郎「ッ!?なんだぁこれはあ…さっきの空振りしたんじゃなかったのかよおお」

さっき出した漆の型は妓夫太郎に向かって行ったが、呆気なく鎌で弾かれてしまった。当たんなかったか。これはまあ想定内。

その瞬間に隣の宇髄さんが居なくなって、目の前に妓夫太郎の背中が見える。

ちらりと宇髄さんを見やれば額当てがパックリと割られて、抑えていた髪がはらりと落ちた。クソイケメンだな…

『(いやいやそんな場合じゃない)』

いよいよ…これからが本番だ。

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