第65話

作戦会議
6,570
2021/01/22 11:47

伊之助「だーかーらー俺らんとこに鬼がいんだよ!!」
場所は変わり、ある昼下がりの屋根の上。
身振り手振りばかりでほとんど伝わっていない鬼の目撃情報を、伊之助は必死に炭治郎に伝えていた。
伊之助「こういう奴がいるんだってこういうのが!!」
『伊之助それ全然伝わってないよ』
炭治郎「いや…うんそれはあの…ちょっと待ってくれ」
伊之助「こうか!?これならわかるか!?」
手をワキワキさせながら伊之助は叫ぶ。
うーん、可愛いけどそれ1ミクロンも伝わってない。
必死に伝える伊之助が可愛いけど。(2回目)
炭治郎「そろそろ宇髄さんと善逸 定期連絡に来ると思うから…」
伊之助「こうなんだよ!俺にはわかってんだよ!」
炭治郎「うんうん……」
『不毛な会話すぎてしんどい可愛い』
私たちが屋根の主棟しゅむねにしゃがみこんで話していると、宇髄さんが衝撃の一言を放った。
宇髄「善逸は来ない」
『……!(帯に捕まったのか…)』
伊之助「(コイツ…やる奴だぜ
音がしねぇ…風が揺らぎすらしなかった…)」
炭治郎「善逸が来ないってどういうことですか?」
宇髄「…お前たちには悪いことをしたと思ってる。
俺は嫁を助けたいが為にいくつもの判断を間違えた。
善逸は今行方知れずだ、昨夜から連絡が途絶えてる。
お前らはもう“花街ここ”を出ろ。階級が低すぎる。
ここにいる鬼が“上弦”だった場合対処できない。
消息を絶った者は死んだと見倣す。後は俺一人で動く」
炭治郎「…っいいえ宇髄さん俺たちは……!!!」
宇髄「恥じるな。生きてる奴が勝ちなんだ。
機会を見誤るんじゃない。」
伊之助「待てよオッサン!!」
宇髄さんはそれだけ言うと、衝撃だけ残してその場から消えてしまった。
『宇髄さん……………』
遊郭編、刀鍛冶の里編も死者はいない。
原作ではそうなってても、もしものこともあるかもしれない。
………そのために私が来たんじゃんか。
炭治郎「俺たちが一番下の階級だから信用して貰えなかったのかな…」
『あはは、炭治郎それはないよ』
炭治郎「えっ?」
私が思わず笑って言うと、炭治郎は目を丸くした。
伊之助「俺たちの階級“庚”だぞ。もう上がってる。下から4番目」
伊之助は手を前に出すと、グッと強く拳を握った。
「階級を示せ」

── “言葉”と筋肉の膨脹によって浮き出る此は

“藤花彫り”という特殊な技術。

鬼殺隊の印である。

炭治郎「何それ…………」
伊之助「藤の山で手ェこちょこちょされただろ?」
『まあうちも最近伊之助に言われて思い出したし、そんなこともあるって炭治郎!』
しょんもりしている炭治郎の背中を私と伊之助でパムパムと叩いてあげた。
はあ、このシーン尊い。立ち会えた最高。
『(なんかこの感覚久しぶりだな…)』
炭治郎「そうだ、こんな場合じゃないんだゴメン
夜になったらすぐに伊之助とあなたのいる“荻本屋”へ行く。それまで待っててくれ、俺のいる店も調べ終わるから」
伊之助「何でだよ!俺のトコに鬼がいるって言ってんだから今から来いっつーの!!あったま悪ィなテメーはホントに!!」
『ちょっとちょっと落ち着いてってば』(止める気ない)
その後炭治郎は伊之助にペムペムされながら話を続けた。

炭治郎「建物の中に通路があるんじゃないかと思うんだよ」
伊之助「通路?」
『確かに。出入りしてるって情報なし、そしていまだに見つからない鬼……
中で働いてる者の可能性が高い上に、この街にいる鬼はきっと上弦の鬼。
働いてる者の可能性が高いってことは……』
炭治郎「…ということは、人を殺すのには慎重になる バレないように」
伊之助「そうか…殺人の後始末には手間が掛かる。血痕は簡単に消せねえしな」
『つまり、この夜の街には鬼にとって都合がいい。けどその分___
炭治郎「都合の悪いことも多い」
『そゆこと』
伊之助「夜は仕事をしねぇと不審だもんな」


炭治郎「俺は前いつも宇髄さんの奥さんたちも皆生きてると思う。
そのつもりで行動する。必ず助け出す
伊之助にもあなたにもそのつもりで行動して欲しい
そして絶対に死なないで欲しい


それでいいか?」
伊之助「『…………』」
伊之助「…お前が言ったことは全部な 今俺が言おうとしてたことだぜ!!」
『当たり前じゃん、ここでなんか絶対に死ねないよ。
さっきの言葉炭治郎にもそのままそっくり返す。
炭治郎にも絶対に死なないで欲しいなあ』
炭治郎「……あなた…」

私たちはひとまず自分の店に戻って行った。
それぞれの意志を、決意を強く強く固めて─────

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