you side
エレベーターでリビングに向かう
ドアを開けるとフライドチキンのいい匂いがする
ヨウォンが隣の椅子を叩く
一斉にいただきますの声が響く
チキンを一口齧ると肉汁と辛味が口いっぱいに広がる
チキンを食べながらホンソクと映画観たことを思い出す
あれはテスト終わりの日だった
わたしは両親が出張でホンソクは家族に評定前だから友達と泊まり込みで練習すると嘘ついて家に泊まったっけ
帰り道に借りたDVD
新作のコーナーにありながら、ディスクは1枚だけで、端っこに置かれていた
3ヶ月前映画館でヒットした話題の作品の棚が横にあって、その作品は全て貸し出しされてて
その残された1枚が気になって借りた
家に着いて、テストの復習してたら、ホンソクはペンを握ったまま寝てた
冷たいソーダのコップを当てると驚いて起きた
スマホでチキンを頼み、順番にシャワーを浴びる
ホンソクは普段練習着にしてるトレーナーを着て、私はこんな日のために買った可愛いパジャマを着る
リビングでくつろぐホンソクの横に座る
ホンソクの顔が近づく
咄嗟に目を閉じるとタイミング悪くベルが鳴る
顔が熱いのはシャワー浴びたばかりだと信じたい
チキンを食べながら映画を見る
初めは戦闘シーンが多い
お互いビビりながら見る
ゾンビが迫るシーンでホンソクはビックリして手に持ってたチキンを投げて画面に当たる
中盤になっても戦闘シーンが多くムードなどない
ふと肩に重さを感じる
横見ればホンソクが眠っていた
きっと練習で疲れていたんだろう
わたしはブランケットをかけ、ボリュームを下げ最後まで見た
終盤に近づくにつれラブストーリーになる
ああ、なんでここまで起きてないんだろう…
キスするなら今だったのかななんて思って片付けをしてそのまま眠りについた
あの時も今もタイミングが悪すぎる私たち
きっと次もみんなと見ても同じところで寝ちゃうんでしょ?
その時はあの時と同じようにわたしの肩にもたれて寝てくれるよね?
それとも私がもたれても振り払わないでいてくれる?
今食べてるチキンもあの時食べたチキンも同じ味のはずなのに
どうしてあの時より美味しく感じないの?
あの時は美味しかったの
けど今は胃もたれしそうなの
あの時は一緒に食べた人が美味しそうに食べてて愛おしく感じたからかな
今もあなたは愛おしいのにこのテーブルの距離が、いや、離れていた長い時間が美味しく感じなくさせてるのね
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。