ホンソク side
ずっと好きだった彼女が目の前でミモザを飲んでいる
美しい黒髪は色褪せることなく昔と変わっていなかった
彫りをいかした濃いめのメイク、甘い香水、ボディラインを強調した服
お酒を飲みながらあなたとの思い出がフラッシュバックする
同じ高校の特進コースのあなた、芸能コースの僕
いつも低めにまとめたお団子
ナチュラルに仕上がったメイク
規定よりやや短いスカート
通学のバスでいつも見かけてた
バッジをみると僕と同じ学年だがコースが違うことがわかる
名前を知りたくて特進コースの友達に聞いたっけ
あだ名が氷の女王だったね
容姿端麗、成績優秀、唯一の欠点が笑わないってことくらいでさ
でも知ってるんだ、あなたが笑うと可愛いってこと
バスの中でバッグにつけていたBIGBANGのストラップを落として、それを拾って渡してくれた時、笑ってくれたよね
しかも同じ曲が好きと言ったの、覚えてる
校舎も違って授業も一切被らなくて、何度学校で探したことか
屋外にある螺旋階段で昼休憩にヘッドホンしながら踊ってるのをみて声をかけずにはいられなかった
それから昼休憩に放課後、一緒にダンスしたっけ
寒い日の夕方、あなたに告白したんだ
芸能コースは恋愛禁止だから隠れてデートしたっけ
そして3年生の秋になったらあなたは受験の為、螺旋階段ではずっとテキスト持ってた
僕はその横にいるだけであったかくて幸せだった
ソウル大学に楽々受かる成績の裏にはずっと努力してることも知ってた
受験の前日、約束したよね
僕がアイドルになって1位を取れたら学校の前にあるカフェで待ち合わせしようって
アイドルになる訳だからデートとかはもちろん連絡も取れなくなるけど番号やSNSは変えずにそのままでいようって
仕事の付き合いとかで練習生同士2人で出かけることもあったけどいつだってあなたと重ねていた
ただその出掛けるのだって断ればよかった
そのことがきっかけで熱愛報道になった
事務所は火消ししてくれたけどネットの火までは消えなかった
けどあなたなら信じてくれてると思ってた
しばらくしてから知ったんだ
あなたがレースクイーンになってて、他のアイドルと付き合ってるということに
それもあなたが好きだと言っていたBIGBANGのTOPさんだった
レジェンドに駆け出しの僕が敵う訳ない
ずっとあなたのインスタを見ていた
そして1位を取った翌日にあなたのカトク、インスタ、電話にメッセージを送ろうとするとアカウントが消えていたり、更新が2年前で止まっていたり、機械的なアナウンスしか流れなかった
レースクイーンのインスタアカウントにDMを送るも既読にはならなかった
もしかしたら既読をつけずに読んでると思って次の日待ち合わせ先のカフェに行く
オープンからクローズまでカフェが見える駐車場であなたの姿を待っても現れなかった
宿舎に帰ればみんながいた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。