そう言ってそらるさんは、まふくんの腕の中に倒れ込んだ。
薄暗い中、いきなりの出来事に驚きを隠せない。
そんな僕とは裏腹にまふくんは手早く状況を確かめた。
試しに何人かに電話をする。
しかし、一向に繋がる気配は無かった。
一応、LINEも試してみる。
…………ダメだ、送れない…
彼が必死で冷静さを保っているのが分かった。
こんな時、いつも頼りになるはずのそらるさんがこの状態だ。
…僕もしっかりしないと!
その言葉を聞いたあと、僕は少し慣れてきた目で歩き出した。
*****************************
まふまふside
自分の腕の中で力なく横たわり、苦しそうな息を繰り返すそらるさんを、力いっぱい抱きしめる。
不安な気持ちもあったが、それ以前になんで気づいていたのに無理矢理にでも止めなかったんだという後悔が、僕の中を満たしていった。
まるで外にいるような寒さに凍りつきそうな僕とは裏腹に、そらるさんの身体は、ありえないほど熱かった。
…さっきから、そらるさんの震えが酷くなっていっている。
そう言ったそらるさんの身体を僕はひたすら抱きしめることしか出来なかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。