カッカッガンッ !
木剣がぶつかり合う音が訓練場に響く 。
訓練場には 、イリオスと騎士のフォスが打ち合いを
していた 。
イリオスは 、いつもは下ろしている長い髪を一束に
して結い上げていた 。
そのイリオスの相手をしているのは 、
フォス・ブライアント 。20歳 。
騎士の中でも最高位の人物で 、その腕前は王国一 。
4年前 、フォスが16歳の時から彼に勝てる者は
誰一人としていないのである 。
ちなみに容姿も端麗 。
一部からは 、光の騎士と呼ばれているらしい 。
何時もなら 、基礎と5試合程打ち合いをして稽古を
終了している 。
しかし 、今日はその2倍 。
17歳の身体は 、限界を超えているはずだ 。
イリオスは考えた素振りを見せると諦めがついたのか大きく息を吐いた 。
そう言うと互いに礼をする 。
イリオスは壁にもたれて座り 、水分を補給する 。
先程 、パンで火傷した舌がまだヒリヒリしている 。
フォスはタオルで汗を拭きながら 、イリオスの隣に
腰を下ろした 。
フォスは 、笑みを浮かべながら頭を下げる 。
この4年 、必死に稽古を重ねてきた 。
勿論 、最初に比べたら技術は上達しただろう 。
それでもまだ 、フォス達には到底及ばない 。
弱い自分に腹が立つ 。
私は 、俯き拳を強く握る 。
私はフォスの声で顔を上げる 。
フォスは 、大きな手で私の手を優しく包み込む 。
フォスは 、真剣な眼差しで私を見つめる 。
" 光の騎士 " って言われる理由が今なんとなく
分かった気がする 。
二人は 、顔を見合わせて笑う 。
──── 訓練場に 、明るく暖かい光が差し込んだ 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。