『そんなに叫んでどうしたの。桐山さん?』
窓からこちらを見ていたのは私が一番嫌いな人。
そう、山田涼介だった。
山田くんは窓の縁に肘をつき、その手に顎を乗せてこちらを見ていた。
『や、山田くんこそ、どうしたの?』
今のは蘭ちゃん。
私は固まりすぎて声も発せない。
クラスのみんなの興味津々な目、鋭い目…。
様々な視線がとんできて痛い。
廊下からも、さっきまで山田くんを囲んでいた女子達の視線がすごい。
「な、なんでしょうか?」
やっと話せた言葉。
あぁ、これ以上関わりたくないな…。
そう思っていたのもつかの間。
『今日も可愛いね、桐山さん。』
「え?」
なんて事を話してるんだ。
今の山田くんの言葉で、学校が壊れるんじゃないかと思うほどの悲鳴が鳴り響いた。
私と蘭ちゃんは思わず耳を塞いだ。
山田くんはニコッと笑っていなくなった。
「な、なんだったの…?」
『あなた、どういう事ーー!?』
その後は察しの通り、蘭ちゃんとクラスメイトからの質問の対応に必死だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!