日向くんは私の腕を引っ張った。
え?と思った時には日向くんの腕の中。
山田くんも目を丸くさせている。
『山田くん、独占欲が強すぎると嫌われるよ。』
下駄箱には帰ろうとしている生徒の姿。
みんなの視線は──私達三人。
『日向くんには関係ないよね?』
山田くんは表の顔で微笑んだ。
だけど、目は笑っていない。怖すぎる。
『関係あるよ。』
私は山田くんの時同様、顔を上げた。
日向くんは私の目を見て言った。
『俺…あなたちゃんの事が気に入っちゃった!』
『は?』
山田くんの低い声が響き渡った。
『ふざけんじゃねーよ、こいつは俺のだ。』
『あなたちゃんをモノ扱いだなんて、酷いなー。』
私の取り合いが始まった。
二人の素が現れ、下駄箱にいる生徒(主に女子)がパニック。
『え?どういう事?』
『山田くんが…俺様!?』
『え、待って!日向くんも!?』
ザワザワうるさい。
私の右腕は山田くん。
私の左腕は日向くん。
私は両腕を振り回すと
「ごめんなさい!!」
これ以上ないほどの大声で叫ぶと、静まった下駄箱で靴を履き全力疾走。
見事に逃げ切った。
『あの二人を置いていくなんて…!』
『あなたちゃん、カッコよすぎ!』
『でも、本当に美人だよなー!』
男女共、またもやザワついた。
私が知るはずもなかったけど。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。