桜舞う、3月下旬。
春風に乗っていろんな音色が聞こえてくる。
その音色ひとつひとつを拾い集めて、
大きく息を吐いた。
田舎暮らしの新高校1年生の私。
音楽が好きで、たまに曲も作ったりする。
頑張って貯めたお小遣いでキーボードとパソコン、作曲ソフトを買った。
お父さんは「将来の為に貯金しなさい」
って言うけど、
これが将来のためになるんだからいいんだって無視した。
お母さんも音楽好きだった。
いろんな曲を聞かせてくれて、私が作った曲も褒めてくれた。
将来は音楽に関係する事をしたかった。
歌でも、作詞作曲でも。
何でも良かった。
何でも良かったから、良くなかった。
歌に関しては自他ともに認める音痴。
作詞作曲はできるけど、
ジャンルがバラバラで定まらず
結局何を作りたいのかわからない。
こんな田舎だからCDもまともに買えなかった。
パソコンやキーボードは家から1番近い電化製品店に行って買ったけど、
そこですら車で往復数時間かかる所にある。
お母さんは都会に住んでいたからCDをたくさん持っていたらしい。
でも、少し古いものばかりだ。
ネットに曲をあげたら「古くさい」とか「音痴」とか
言われる始末。
しょうがないでしょ、テレビの音楽番組くらいでしか最近の曲聞けないんだもん。
(YouTubeは見てない)
だから、自分で初めて買ったCDをずっと聞いてる。
家にあるやつじゃ1番新しい音。
バーチャルシンガーの「初音ミク」のアルバム。
歌が下手でも、ミクが歌ってくれる。
私の代わりに歌ってくれる。
初めて聞いた時は衝撃的だった。
いつかミクに自分の歌を歌ってもらうことが
私の夢だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!