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第1話

プロローグ
1,142
2021/03/08 06:00





桜舞う、3月下旬。

春風に乗っていろんな音色が聞こえてくる。
その音色ひとつひとつを拾い集めて、
大きく息を吐いた。




田舎暮らしの新高校1年生の私。
音楽が好きで、たまに曲も作ったりする。
頑張って貯めたお小遣いでキーボードとパソコン、作曲ソフトを買った。

お父さんは「将来の為に貯金しなさい」
って言うけど、
これが将来のためになるんだからいいんだって無視した。

お母さんも音楽好きだった。
いろんな曲を聞かせてくれて、私が作った曲も褒めてくれた。




将来は音楽に関係する事をしたかった。
歌でも、作詞作曲でも。
何でも良かった。

何でも良かったから、良くなかった。

歌に関しては自他ともに認める音痴。
作詞作曲はできるけど、
ジャンルがバラバラで定まらず
結局何を作りたいのかわからない。




こんな田舎だからCDもまともに買えなかった。
パソコンやキーボードは家から1番近い電化製品店に行って買ったけど、
そこですら車で往復数時間かかる所にある。

お母さんは都会に住んでいたからCDをたくさん持っていたらしい。
でも、少し古いものばかりだ。

ネットに曲をあげたら「古くさい」とか「音痴」とか
言われる始末。
しょうがないでしょ、テレビの音楽番組くらいでしか最近の曲聞けないんだもん。
(YouTubeは見てない)




だから、自分で初めて買ったCDをずっと聞いてる。
家にあるやつじゃ1番新しい音。

バーチャルシンガーの「初音ミク」のアルバム。

歌が下手でも、ミクが歌ってくれる。
私の代わりに歌ってくれる。
初めて聞いた時は衝撃的だった。

いつかミクに自分の歌を歌ってもらうことが
私の夢だ。




あなた
都会に行きたい
お父さん
お父さん
まだ諦めてなかったのか。
あなた
諦めるわけないじゃん!
CD買いたいしミクのソフトも欲しいもん
お母さん
お母さん
ミクって、初音ミクのこと?
あなた
そうだよ
お父さん
お父さん
へぇ、VOCALOIDに興味があったのか
あなた
ぼ、ぼーかろいど?
バーチャルシンガーじゃなくて?
お父さん
お父さん
どっちでもいい。
まあ、そんな事はどうでもいいんだ
あなた
どうでもいいって何よ(
お母さん
お母さん
いいから、いい話よ
お父さん
お父さん
東京に引っ越すことになった
あなた
え?
お母さん
お母さん
お父さんの会社からメールが来てね、
東京に転勤することになったんですって
お父さん
お父さん
俺だけ行ってもいいが、どうする?
あなた
行く!行きたい!!!
あなた
っしゃああ!!
お母さん
お母さん
こら、そんな声出さないの
あなた
ごめんなさい()
お父さん
お父さん
じゃあ明日から引っ越しの準備始めるからな、自分の荷物ちゃんとまとめておけよ
あなた
はーい!
あなた
じゃあ、そろそろ寝るね!おやすみ!
お母さん
お母さん
喜んでもらえてよかった
お父さん
お父さん
…でもいいのか?
友達との別れは辛いだろ
お母さん
お母さん
あの子ね、クラスに馴染めてなかったみたいなのよ
お父さん
お父さん
…そうだったのか。
お母さん
お母さん
今の環境が合ってなかっただけ。
きっと新しい場所では友達出来るわよ
お父さん
お父さん
そうだな。
自慢の娘だからな
お母さん
お母さん
それに…いい曲作るものね
お父さん
お父さん
ああ。
お父さん
お父さん
俺たちもそろそろ寝るか
お母さん
お母さん
ええ。おやすみなさい
お父さん
お父さん
おやすみ

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