コンコン
ノックをしても返事がない。
多分まだ寝てるんやろうな。
ドアを開けると、やっぱり小太郎はまだ寝ていた。
体を揺さぶると薄らと目が開いた。
小太郎に腕を引っ張られたせいでバランスを崩して倒れ込んだ。
寝ぼけているのか、うつ伏せの清春の上に乗っかってきた。
承諾を得ると、上に乗ったまま眠りについた。
ペシペシ、と頭を叩くと怠そうに起き上がった。
ぴょこん、と立った寝癖を揺らしながらトイレに行った。
相変わらずマイペースやなぁ。
あんな寝ぼけてたのに話はしっかり聞いてたんだ、と少し感心。
あからさまに嫌そうに顔を顰めた。
小太郎が安心の笑顔を浮かべ、唇にキスをした。
捨て犬のように寂しそうな眼差しを向けてきた。
学生時代の話を肴に酒が進んだ。
2人で店を後にした。
友達が知らない女性と親しげに話していた。
二人の会話はどんどん盛り上がっていった。
こたとの約束もあるし、そろそろ帰ろうかな…。
女性が腕にしがみついてきた。
きつい香水の匂いが鼻を刺す。
寄いかかるように頭を傾けてきた。
正直、早く家に帰りたいから腕を離して欲しい。
そんなこと口が裂けても言えないけど。
派手なネイルをした長い爪で胸に触れた。
困っていたら腕をグイッ、と引っ張られた。
女性の手を払い除けた。
女性にわかりやすい作り笑いを見せて、清春の手を引いて歩き出した。
何も言わずに家に向かっている。
人目が無くなると、清春の手をパッ、と離して、一人で足早に歩き始めた。
急いでスタスタ歩く小太郎を追いかけた。
怒ってる。
言葉を交わさなくてもすぐにわかった。
玄関で靴を脱いでる小太郎に伝えた。
チラッ、と小太郎の方を見ると、呆れているような、落ち込んでいるような顔をしていた。
あ…、間違えたんだ。
大きなため息をつくと、強く手を握って部屋に進んだ。
顔の横に手を付きながら言った。
怒っている小太郎が怖くて上手く言葉が出てこない。
小太郎からの質問に答えられない。
否定したいのに、怖い。
怖い気持ちを押し殺して小太郎の方を向いた。
喰らいつくように舌が唇を割って入ってきた。
スルスル、と流れるようにズボンの中に手が入る。
勃っているものに沿うように触れた。
敏感になっているモノを遊ぶように扱く。
わかってるくせに。
機嫌悪いときはそういう質問ばっかり。
無視をし続ける清春に対抗するように刺激を与え続けた。
つまらない意地のせいで素直に謝れない。
言い訳と文句ばかり口から溢れていく。
モノの根元をギュッ、と掴まれて出せない。
イキたいのにイケない。
上から見下ろされる強い眼光に射抜かれて、身体の力が抜けてしまいそうだ。
心地の悪い快楽が苦しい。
早く。小太郎の手で。
我慢してることなんか構わず、先の方を指でグリグリと触る。
体内に入ってくる小太郎の指が前立腺に触れるたびに身体が反応する。
俺がイキそうになる度に掴む力を強めて止められる。
何度も何度も寸止めを繰り返されて頭がおかしくなりそうだ。
自分も知らないうちに涙がシーツを濡らしていた。
こんな情けない姿見せたくなかった。
泣きながら年下の小太郎に謝って。
引かれたくない。
満足気にニッ、と笑うと根元から手を離して一気に攻めあげた。
前からも後ろからもさっきとは全く違う気持ちよさに声が漏れる。
1度もイかせて貰えないまま、ナカに小太郎自身が入ってくる。
その言葉を合図に激しく奥に突当てる。
口の中に小太郎の指が入ってきて、清春の舌を捕まえた。
舌を自由にされたものの容赦なく後ろを刺激される。
涙と唾液で顔がぐちゃぐちゃで恥ずかしいのに、気にする余裕がない。
寸止めを繰り返されて敏感になったせいで頭が回らない。
こたのことしか考えられない。
その後、朝まで抱き潰された事は言葉にしなくてもわかるだろう。
小太郎が来るまで時間を潰してると、懲りずにギュッ、と飛んで抱きついてきた。
女性を振りほどいて、足早に席に戻った。
早くこたに会いたい。
清春の表情を見て察したのか、無言で頷いた。
荷物を持って店を出ると、小太郎が付近に立って待っていた。
ほっとして小太郎に駆け寄った。
追いかけてきたのか、清春の腕を掴んだ。
しつこく付き纏う女性に嫌気がさす。
小太郎の手を思わず握った。
けど、小太郎はイヤホンをしていて清春がいることにも気づいていなかった。
大きく振りかざした手が勢いよく近づいた。
女性は小太郎に手首を掴まれていた。
力づくで振りほどくと、小太郎をキッと睨みつけた。
立ち尽くしていた清春の服の襟を引っ張った。
昨晩付けられた無数のキスマークが露わになる。
完全に放心状態の女性をほっといてその場を後にした。
甘えるようにスルッと手を絡めてきた。
そうやって年下の権限使って甘えてくる。
ほんまにずるいよな。
嬉しそうにニコっと笑った。
終
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。