第3話

菜々子ちゃんの願い
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2018/11/24 14:57
「そんなこと本当にできるの?」

「大丈夫。任せて!」

私は少し自信げにそう言った。


「分かった!取ってくるから待ってて!」


そう言って菜々子ちゃんは走って行った。



「おねーちゃん!お待たせ!」


走って戻ってきた菜々子ちゃんの手にあったのは
熊のイラストが特徴的な可愛いレターセットと
ピンク色の熊の柄があるペン。


私が出した提案とは、菜々子ちゃんの両親に
手紙を渡すということ。

もちろん、菜々子ちゃんが書くんだ。



「菜々子ちゃん。字は書ける?」

「まだ完璧には書けないの…」


少し肩を落とす菜々子ちゃん。


「じゃあ私が分からない字は教えるから頑張って書こう!」

「うんっ!」


そして、菜々子ちゃんは下敷きを下に引いて
手紙を書き始めた。


分からない字は私がメモ帳に、書いて見せた
菜々子ちゃんは必死にペンを走らせていた

その手紙には菜々子ちゃんの思いが痛いほど詰め込まれていた。




「できたぁ!」

菜々子ちゃんは嬉しそうに、便箋に熊のシールを貼り付けた後にそう声を上げた。

「よし!それを菜々子ちゃんのママとパパに持っていこう!」


菜々子ちゃんは渡すことができない。

だから私が代わりに届けるんだ。



菜々子ちゃんに案内され、菜々子ちゃんの家の前に到着する。

家の壁に埋め込まれた 表札には

山神 俊樹
山神 沙織
山神 菜々子 と書かれていた。


私はピンポーンとインターホンを鳴らす。

すると、出てきたのはお母さんだった。


「どちら様かしら?」


頭に?マークを浮かべる菜々子ちゃんママ


「はじめまして。皆川 胡桃です。菜々子ちゃんとは仲良くさせていただいてました」


私が菜々子ちゃんの名前を言うとお母さんは
目を開き、目を潤わせた。


「菜々子の…そう。上がってください。今日は旦那も居るので…」


私は菜々子ちゃんのお母さんに通されて
家の中へ、足を踏み入れる。


廊下を渡って案内されたのはリビング。

菜々子ちゃんと笑顔で映る写真立ての中に入ってる写真を見て、チクリと胸を痛めた。



「おねーちゃん?」


そんな私を心配そうに見つめる菜々子ちゃん。

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