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第11話

助けたい人
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2018/11/26 09:53
私と相田くんが肩を並べ帰っていると、
いきなり立ち止まる相田くん。


私も立ち止まり、少し後ろである人を見つめる
相田くんにどうしたの?と聞く。


「あいつ。あいつが俺の救って欲しい人。楠真守だ」


私は相田くんの目線の先に目をやる。

すると、そこにはいつかの相田くんのように
野良猫とじゃれ合っているメガネをかけた男の子の姿があった。


あの子が楠 真守くん。


「とりあえず、真守に声をかけて仲良くなるんだ」


そう相田くんに言われ、私は頷き楠くんと野良猫の元に近づく。


「可愛いですね。」


あまり自分から他人に話をかけたことがない
私は少し緊張しながらもそう声をかけた。

楠くんも私の顔を見たあとに 微笑みながら
「そうですね」と再び野良猫に目を向ける。


ただ静かに。

オレンジ色の光を浴びながらゆっくりと時間が過ぎていくのを感じる。


楠くんは相田くんと違う性格をしてる。

相田くんが人を照らす太陽なら、楠くんは
温かい風を静かに送る夏風。


「猫、好きなんですか?」


あまり話をかけるのが得意ではないはずの
私でも、彼とは…楠くんとは自然と声をかけることができる。


「最初はあまり好きではなかったんですが…ある友達が好きでその影響で好きになったんです」


きっと彼の言う友達とは相田くんのことだろう



「でも彼は…僕のせいで」


伏し目がちにそう寂しく呟く楠くんは
まるで黒い闇の中に吸い込まれそうだった



「あ、こんな時間…では」


時計を見て、そう言い立ち上がる彼。

相田くんがわざわざ私に彼のことを頼んだ理由が少しわかった気がする。


_____彼を放っておくことはできない_____



「また、会えますか?」


帰路につくのか立ち去ろうとする彼の背中に
私は無意識のうちにこう叫んでいた。



「ふふっ。何ですか?そのドラマみたいな台詞は」



そう返し、再び歩く楠くん。

彼は私の質問にきちんと回答してくれなかった



これじゃもう本当に会えないような気がする



「待ってます。この猫と一緒に。あなたに会えるのを」


一瞬動きを止めた楠くん。

だけど再び彼は歩き出した。


彼の影はただ、ゆらゆらと地面にうつっていた。


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