第8話

初めての感覚
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2018/11/24 18:14
「胡桃って一人暮らし?」


仕方なく私は彼を家に上げた。


「祖母と二人暮らしなんですけど、ギックリ腰で入院中なんで今は1人です」


「ふーん。」


彼は私の両親のことについては触れてこなかった。

私はそういう彼の優しさを、感じることが出来た。


「えっと…それで、どうして家が…」


「覚えてないんだよ。自分の名前と高校、思い残したこと以外」


今まで数多くのお化けと関わってきたが
そんなこと今までの例にはなかった。

一時的な記憶の欠損?
後で祖母に聞こうと思った。


「なるほど…では、私の家を使うざる負えないですね…」



私は彼に記憶の一時的な欠損の他に気になることがあった。


それは彼のオーラだ。

今までのお化けはどこか白っぽいオーラだったのだが彼は黄色い。


性格によるものなのかな?とその時は大して気にしなかった。






「晩御飯どうします?って食べられないか…」

私は無駄にくつろいでいる相田くんにそう声をかけた。



「え、胡桃が作るの?」

「まぁ、はい。」

「食うっ!」


無邪気な笑顔を見せ、そう言った相田くん

私はキッチンに立ち、冷蔵庫の中を見渡して
からハンバーグを作ることに決めた。


私のお母さんみたいに私は料理が上手ではないけど、並大抵のレベルにはどうにか作れるようになった。


祖母の食生活も管理しているのは私。


「ハンバーグとか嫌いじゃないですよね?」


私はエプロンを、付けながら
リビングの椅子に座っている相田くんにそう声をかけた。


「うん大丈夫〜」


頬杖をつき、ニヤニヤしている彼。


「な、何ですか?」

私が、そう聞くと


「いや〜新婚みたいだなって思って」


「相田くんの晩御飯作りませんよ?」


「ごめんなさい」


一人っ子で長い間、人との関わりを絶ってきた私にとって相田くんとのやりとりは
少し楽しかったりもする。

まるで、友達ができたかのような。

私には勿体なさすぎる話だけど、今だけは
こんな体験してもいいよね?



「「ごちそうさまでした!」」


「胡桃、美味かった!」

「ありがとうございます」


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