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第1話

出会い
162
2018/04/02 08:41
高校2年生の春を迎えていた私は、



白いお城を背に



現実逃避するかのように、外の桜並木道のベンチへ腰掛ける。









風が吹いた。

その風に乗ってきた、香り。

私が好きな香り。










「桜って…幸せなんですかね。」




その香りと共にやってきた、
なぜか安心してしまうこの声に私は答えてしまった。





「きっと、幸せですよ。」





「1年に1度しか咲かないのに?すぐ散ってしまうのに?」







「裏を返せば1年に1度、必ず咲きます。


そして、こんなにも多くの人がそれを見に来る。


それだけで幸せでしょう。」




「それにほら、私みたいに1年中ここに来て桜
を見る物好きなひともいる。


そんな人に1人、この世界でめぐり逢えたら…」



「きっと、世界で1番幸せです。」








「そっか…。」


「あ、突然すみません。ちょっと道をお尋ねしたいんですけど…」



「あ、はい!」






振り向くとそこには…



_____彼がいた。






「…あ、あぁぁぁぁあ!!!」




「しーっ!静かに。」




「す、すみません。つい…」




笑いながら地図を見せ、道を聞く彼に私は…




また、一目惚れした。




「ここを右で、2本目を左。」




「そこから4軒目です。」



何度目かの確認に答えるが、



「え、、?ここが…?」



自信は無さそうだ。



「あの…良かったら、案内しますよ?」



ドキドキをおさえながら、思い切って言ってみた。



「いや、でも…」



私の服を見て戸惑う彼。



「あ、ちょっと準備してきます!」




そう言って、彼を私の部屋の前のベンチで待たせ、部屋に入る。





すると…



いる予定のない、両親がいた。





「え?どうしたの。」



「…茉衣(まい)どこへ行っていたんだ。」



「すぐそこの桜並木」


「話があるから、座りなさい。」



重々しい空気に、

嫌な予感だけはしていた。




「将来はどうするんだ。

お前がどうしても、近くの公立高校が良いと言うから認めたものの、これからどうするんだ。」


今、話さなくてもいいじゃない…。


私の予感は当たった。








高2になってから、こんな話が増えた。




父親はこうやってたずねてくるけど、


これ以上、私の意見が通ることはない。


だから、黙る。


腹立ったり、、しないように。


その木の葉の数、机の木の目の数、なんでもいい。


ひたすら数えていれば、いつか終わる。



ただ、今日だけは…



“なるべく早く終わりますように”

そう願った。





すると、

「あのね、茉衣これ見て。


素敵なひとでしょう?




立派な写真を見せてきた。




今度、お父さんの仕事でお世話になる会社の社長の息子さんなの。


もし良かったら1度会ってみないかって、お誘いしてもらってね。」




「えっ…?」


まだ意味が理解しきれていない私に追い打ちをかけるように…



「父さんは、進学だけが道じゃないと思っている。」




なんて、言い出した。





やっと意味を理解した私は、

言う予定の無かった、

でもずっとどこかにあった言葉を、



口に出してしまった。






「それは…私にとっていい話じゃなくて、


あなたたちにとっていい話でしょ?」






「茉衣!!家族は大事にしろとあれだけ…」


「家族じゃない!!!!」




…………





…言ってしまった





唯一私が繋ぎとめてきた “居場所” をついに…



手放してしまった。





「私たち、血が繋がってないでしょ。」


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