『 ·····ッた、、 』
スタスタと早歩きだったからか、目の前をよく見ていなかったあなたはゴツイ男に激突した。
「 おいおい痛てぇな嬢ちゃん·····
骨が折れたらどーしてくれんだアァ”!?? 」
『 すみません。急いでるので 』
絡まれてるあなたを見て、こっそり着いてきた伊藤と三橋はぎょっとした。
だって相手はとてもゴツイ、そしてイカつい。
自分たちではまるで適わなそうなのがよく分かる。
「 ·····おい行くぞ三橋! 」
「 はっ?おいあんなの適わんだろ 」
伊藤は動かない三橋を引っ張って、あなたと男の入っていった路地へと足を進めた。
「 なっげぇ前髪しやがって·····、
お?こりゃたまげた、マブイな嬢ちゃん。 」
「 マ、マブイ·····!? 」
マブイ、という言葉に過剰に反応した三橋が飛び出した瞬間__
ドゴオ”ッッ!
鈍い音が路地裏に響き渡った。
『 急いでるって言ってんだろ 』
「 えっ 」
「 強すぎ····· 」
こちらをじっと見ていた2人をあなたは乱れた前髪を直しながら言った。
『 ·····そうだ、この辺でおすすめの喫茶店とかあります? 』
「 へっ?あ、あぁ、それならそこを右に曲がったとこにあるのがオススメデス····· 」
「 ぃ、一緒に行かない? 」
『 あ、えっと·····、今度でもいいですか? 』
「 う、うん! 」
伊藤はあなたの渾身の蹴りに完全に惚れてしまい、デレデレと蕩け始めた。
「 ·····いやぁ、あの蹴り超マブかったな。
でもやっぱ女の子は喧嘩するもんじゃねぇと思うけどなぁ····· 」
「 てめぇ伊藤!抜け駆けしやがって!! 」
伊藤があなたとデートの約束を作ったことに苛立った三橋は伊藤の肩を思い切り殴って
フン、と先を歩いて行ってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!