第3話

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2018/01/26 15:21
あなた

あたし……ずっと好きだった。聖先輩のこと。

でも、もし先輩にこの気持ちを告げちゃったら今まで二年間ずっと積み重ねて守ってたものも全部壊れてなくなっちゃいそうで怖い。

誰かのことを心から思って、その人のことを愛しいって、離れたくないって感じる気持ちをこの世界では恋と呼ぶらしいです。


私は、恋という感情を誰かに抱いたことがないので、彼女の力になってあげられないのが悔しくて、自分の存在がとてつもなくちっぽけに思えました。
あなた

ほら、もうすぐバレンタインでしょ?
先輩、カッコイイし、誰にでも優しくて、運動神経だって抜群、生徒会長までしてたからほんとモテモテで毎年数え切れないほどチョコレート貰ってるんだよ。
そんな中であたしは勇気がなくて去年も渡せなくてさ、こんなんじゃほかの子に先を越されちゃうんだろうなぁって笑

そう言って笑うあなたちゃんの顔は、寂しそうで、何かに怯えてて、たくさんの何かを1人でも背負い込んでるように見えた。 


だけど、その表情は、『悲しい』『寂しい』『怯える』そんな負の感情が沢山混じりあった表情に見えたのですが、決して辛く嫌な表情ではなくなぜかその負の感情たちもひっくるめてキラキラしてるように見えて、先輩の事をただ一途に思う気持ちが彼女のことをこんな表情にさせているのかと思うと、その聖先輩って方にお会いしてみたくなりました笑


『恋』という感情一つでこんなにも、笑えたり寂しくなったり、その人のことでいっぱいにしたり、ほんとに不思議な気持ちで、これだけは何年後も何十年後も科学なんかじゃ解明できないもの。


気がつくともう陽も完全に落ちてしまい、当たりは薄暗く一層冷え込む時間。
あなた

あ!もうこんな時間じゃん!
明日また来るね!

スクールバッグを抱えて駆けていく彼女の後ろ姿を見ていると、なぜか私も自然とまた笑みがこぼれてしまってました笑

あなたちゃんのする色んな表情が見てみたい……『また来るね!』という一言がとても嬉しい一日でした。

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