いつも見ているはずの夕日が今日はやけに赤く見えます。
いつもの時間のいつもの場所。
約束の時間が近づくと緊張からか背筋が自然と伸びる。
彼女とあの少年のことは私だけじゃなくて、お天道さま、神様みんなみんな見守って応援しています。
大丈夫なんて無責任なことは言えませんが、私は彼女のことを信じるからこそ言える言葉。
きっと彼女なら火事場の馬鹿力ってやつを見せてくれるって。
だから私は少しでも彼女がリラックスできるように一番そばから精一杯エールを送ります。
彼女と約束をしましたから────
聞きなれた声が聞こえてぼーっとしていた私の意識は戻る。
私の方へ歩いてくる彼女の顔を見ると、やはり固い表情を浮かべていました。
そして、待ちわびていた彼女の後ろに立つ聖先輩に目を移すと私は度肝を抜かれました笑
私は思わず大声を出してしまいました。
そこに立っていたのは先日私の元へやって来たあのヘタレ少年だったのです。
ヘタレでヘタレで呆れてしまうほどヘタレだったあの少年。
迷い続けたけど最後は告白することを決心したあの少年。
まさかあの少年が聖先輩だったとは……
私の中で今までの別々になっていたピースが繋がって一つのパズルとなりました。
イメージしていた方とは違いましたが、あの少年なら安心して彼女のことを任せることが出来ます笑
私の前まで来ると彼女は振り向き恥ずかしそうにカバンの中からピンクの箱を取り出す。
あなたちゃん頑張って……!
心の中で精一杯叫びました。
今まで出したことがないほど大きな声で。
ちょっ、聖くんそこは胸はって堂々と!
ヘタレ卒業でしょ!?
下向かないで顔上げて!
おどおど緊張丸出しでしたが聖先輩ちゃんと言うべきこと言えました。
先日言ってたとおり12本のバラをあなたちゃんに差し出して────
あなたちゃんの驚きが顔全体で表現される。
思わず吹き出しそうになってしまいました笑
お互いに初々しいぐらい初々しすぎて思わずこっちが笑ってしまいます笑
幸せオーラで溢れきっている2人を眺めていると私まで幸せなきもちでいっぱいになりました。
でも、なぜでしょう。幸せなはずなのに涙が溢れてきます。
寂しい、嬉しい、悲しいたくさんの感謝がどこか心奥底からどんどん湧いてくる……そんな不思議な感情です。
私の声が彼女たちに届いていたのかはわかりません。
これから先の2人の未来が明るく健やかに末永く輝くことができますように
ピンク色に染まった2人の姿を見送ってゆっくりと目閉じた────
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。