顔全体が熱くなるのを感じる。
無意識に頬に手を添えていた。
気持ちが浮ついたまま、窓の外を見る。
だが、現実に戻された。頭から浮ついた気持ちが離れていく。
頬に添えていた手を口元に移す。
ゴワゴワした感触が私の心を地獄へと突き落とす。
この薄っぺらい一枚に依存している私はどうかしてる。
マスクは神様なのだ。私の身体の一部。
そしてこのマスクは特別な宝物。
だって、大我が買ってくれた箱マスクの中の一枚なんだから。
たとえ大我がくれたマスクだったとしても
私は窓に写った自分の顔を見るのが嫌いなんだ。
世界でいちばん嫌い。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!