第25話

業火
71
2021/12/18 13:20
アサヒ
アサヒ
アリアネぇぇぇぇぇっ!!
声が聞こえる。
薄い意識の中、声が聞こえる方を認識する。
毎度イラつかせ、憎たらしい声。
でも、信頼できる声。
アリアネ
アリアネ
…信頼、したい声。
アリアネ
アリアネ
っ!!
化け物
!?
突如現れた炎。化け物は細い足で回避する。
しかし、その炎は化け物に対して放たれたものではなかった。
アサヒ
アサヒ
だぁぁついっ!!
炎は一直線にアサヒの右腕へ、そして絡まるように炎はアサヒの右手で留まる。
炎は右腕を強く締め付け、火力が一気に上がる。
アサヒ
アサヒ
あぁぁぁあぁあぁあ!!マズイやつ!自分から言っといてマズイやつ!
もちろん、燃やされている本体にダメージは入る。
化け物
アサヒ
アサヒ
どうだっ!これこそ、「フレイム・アーム作戦」、あぁあっ!無理っ!あっつい!!
「フレイム・アーム作戦」
アリアネの炎を腕に巻き付ける作戦。
普通に放つより、一点に集中しているため火力が上げやすくなっていて、その火力を保持しやすくなっている。
だがデメリットとして、できる人が限られている。
化け物
…はは
アサヒ
アサヒ
あぁもうっ!!行くぞっ!!
化け物
はははははははははっ!!
アサヒは燃える拳を構える。化け物は高笑いする。
戦いが、始まる。
アサヒ
アサヒ
俺の辛さを思い知れっ!!
地面を強く蹴り、化け物に迫る。
化け物は口で黒い繊維を固め、棘を作る。
そして、アサヒの顔目掛けて放たれた。
アサヒ
アサヒ
しぃ、甘いっ!
化け物
その棘をアサヒは避ける。ことはせず、燃える拳を棘にぶつけた。
棘は一瞬にして繊維に戻り、その繊維は灰と化した。
化け物
ははははははははっ!!
アサヒ
アサヒ
もう怖くねーぞ!…そんなことないかも!
何度も放たれる、繊維から作られた物体。
それらを全て焼き溶かす。
化け物との距離は近づいていき…。
化け物
はははっ!
アサヒ
アサヒ
おいっ!逃げんなっ!
逃げられる。
一体その細い足のどこから力がわいているのか、と思うぐらい化け物は速く走る。
アサヒも全速力で走った。
アサヒ
アサヒ
待てゴラッ!
化け物
はははっ!
化け物は木々にぶつかり、低い音を立てながら森を進む。
アサヒは木々スレスレを通り、出来るだけ最短ルートで化け物をおう。
しかし、速さはほぼ同じ。泥沼状態である。
アサヒ
アサヒ
うわぁ腹立つっ!
ずっと逃げられるといい、右腕が痛いといい、もうイライラが限界である。
何か良い策を見つけなければ。
持続するとはいい、現状この炎が長続きする訳ではない。
炎の主のアリアネは、現在戦闘不能状態である。
アリアネが力尽きれば、炎も消える。
アサヒ
アサヒ
とりあえず、アリアネに助けを求めよう
アサヒは一旦足を止める。
アサヒ
アサヒ
…ん?何俺馬鹿なこと言ってるだ?あーもうイライラが止まらんくて頭おかしくなる!
もう精神が狂い始める。
何度も致命傷を負い、動けるのは自分だけになり、しまいに逃げられる。
これにイラつかない人なんているのだろうか?
アサヒ
アサヒ
もーどうすんだよ!化け物速いしアリアネ動けんしミネラいないし!!…あっつぅ!!
両腕で頭を抱えてしまったため、炎がアサヒの頭を燃やす。
燃えうつった炎を消し、焼け焦げた皮膚や髪は再生される。
アサヒ
アサヒ
もうヤダ!やっぱり一旦アリアネんとこ行こう。そして火ぃ消してもらお…
アサヒはふと気づく。
この戦い、化け物に勝ち目があるはずなのだ。
アリアネを倒せば、戦力は全て消える。
そしたら一方的にやれるはずなのに。
アサヒ
アサヒ
何でアリアネを狙わないんだ?
アサヒは化け物を後にし、アリアネのところへ戻ることにした。

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