「入れ替わるように。と言うと・・・」
「そう。移り変わっていくの。」
「幼稚化したような症状が起きるのは1人だけ。と、言うことですか・・・」
「そう。しかも老若男女誰に移り変わるか分からないから防ぐことも出来ない。だからいつ誰が取り憑かれて幼稚化するかもわからない。この町に来た時人がやけに少なく感じなかった?」
「あ、あぁ確かに考えてみると・・・」
「いつ自分がそのようになるか分からないからこの町の人は、あまり家から出ないようになったの。」
「そうなんだ・・・」
「その効果はあったの?」
「・・・今のところ全くない、と思う。家の中に籠っていたのに取り憑かれた人もいるんだって。」
「・・・ねぇ美咲?」
「なに?」
「美咲の近くの人でそのようになった人っている?」
「ん〜、あっ!そうだ、私と同じクラスの子がなったっていう噂を聞いたことがあるよ。」
「その人どうなったの?」
「ん〜、分からないその子の親がすごく怖がって引っ越して行っちゃったんだ〜」
「・・・彩野さんちょっと質問いいかな?」
「なに?」
「そのようになるのってこの町の人だけなの?」
「たぶん・・・今まで聞いた話だとこの町の人だけだよ」
「・・・そっか」
「どうして?」
「あ、あぁもしこれが幽霊の仕業なのだったら・・・」
「だったらなに?」
「あぁそういう事ね、意味がわかったわ。」
「え?美華もわかったの?」
「・・・美咲まだ分からないの?」
「ん〜、わかんない!」
「俺が説明します。・・・もしこれが幽霊の仕業でこの町の人にしか取り憑かないのなら、その幽霊はこの町に未練がある。と考えられるということです。」
「未練・・・」
「そう。彩野さんこの町で幼児殺人事件があったりしなかった?この町でじゃなくてもこの町に住んでいた子とか・・・」
「ん〜、あっ!!そう言えば!」
「美咲あったの?」
「うん!1年前隣り町の6歳くらいの男の子がこの町まで誘拐されて殺されたらしいよ。」
「どこで?」
「川の近くにある廃工場だったと思う、その男の子が逃げ出して隠れている所で殺されたらしい・・・」
「そんなことが・・・」
「もしかしたらその男の子の幽霊がその未練で色々な人に取り付いているのかもしれない。」
「ゆ、幽霊・・・」
「フフ、怖いの?美咲?」
「こ、怖くなんかっ、!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!