迎えた土曜日───。
私たちは家族3人、内海家へとやって来た。
すっかり内海家の子になっている福を見て、あの捨てられていた雨の日を思い出す。
……オオカミ先輩がいたから、今の福がいる。
そう思うと、オオカミ先輩には本当に感謝しかない。
一緒に出迎えてくれたオオカミ先輩は、一言も発することなく。オオカミママの一声で、全員玄関からリビングへ進んだ。
***
───1時間後。
オオカミママの用意してくれた料理を頂きながら、みんなで楽しく話に花を咲かせていた時、
オオカミママの質問に、思わず言葉に詰まる。
"動物園に行った仲なんだし"と、続けたオオカミママの言葉に、オオカミパパを始め、うちの両親まで興味津々だ。
……へぇ、オオカミ先輩ってお姉ちゃんがいるんだ。
───カタン、と小さく音を鳴らして席を立つと、オオカミ先輩は福を連れてリビングを出て行ってしまった。
オオカミママの助け舟もあり、なんとかその場を抜け出した私は急いで玄関を飛び出した。
***
角を曲がってすぐ、オオカミ先輩と福を見つけた私は叫ぶ。
"好きにしろ"
それだけ言って再び歩き出した先輩の、斜め後ろくらいを歩く私。
不意に、歩き出した足を再び止めて、私に顔だけ振り向いた先輩。
また、私をからかってる?
……絶対、騙されないんだから!
そう思うのに、見ているこっちが苦しくなるような切ない瞳に、何も言えなくなってしまう。
再び前を向いて歩き出した先輩。
もしかしたら先輩も少しは私のこと……。
そんな淡い期待を抱いては、すぐにブンブンと首を横に振る。
先輩は、ふしだらなオオカミ。
騙されたら食べられちゃう、危険なオオカミ。
───だけど。
さっきの言葉が、全部本当ならいいのにって思ってしまう私はやっぱり、そんなオオカミのことが好きで、きっとこの想いはもう止められない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!