第24話

久しぶりの内海家
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2022/06/12 09:00
迎えた土曜日───。

私たちは家族3人、内海家へとやって来た。
内海家 パパ
内海家 パパ
いらっしゃい、森川。
それに、奥さんと海さんも、
突然の誘いにも関わらず
お越しいただきありがとうございます
森川家 ママ
森川家 ママ
いえいえ!とんでもないです。
この度は海がお世話になりました
内海家 パパ
内海家 パパ
妻が海さんを
たいそう気に入ったようで、
早く食事会をセッティングしろと
せがまれてしまってね
内海家 ママ
内海家 ママ
海ちゃん久しぶりね〜!
元気そうで良かった〜♪
森川 海
森川 海
私も、またお会いできて
とっても嬉しいです
ワンワン!
森川 海
森川 海
あ!福〜〜!元気だった?
見ないうちにちょっと大きくなったね〜
ワンッ!
すっかり内海家の子になっている福を見て、あの捨てられていた雨の日を思い出す。

……オオカミ先輩がいたから、今の福がいる。
そう思うと、オオカミ先輩には本当に感謝しかない。
内海家 ママ
内海家 ママ
とりあえず、ここじゃなんだし、
皆さんどうぞ中へ!
内海 柊佑
内海 柊佑
…………
一緒に出迎えてくれたオオカミ先輩は、一言も発することなく。オオカミママの一声で、全員玄関からリビングへ進んだ。
***

───1時間後。

オオカミママの用意してくれた料理を頂きながら、みんなで楽しく話に花を咲かせていた時、
内海家 ママ
内海家 ママ
そういえば、そろそろ
花火大会があるわね〜!
海ちゃんは誰かと行くの?
森川 海
森川 海
え!……あ、
オオカミママの質問に、思わず言葉に詰まる。
内海家 ママ
内海家 ママ
せっかくだから
柊佑と行けばいいのに〜!
"動物園に行った仲なんだし"と、続けたオオカミママの言葉に、オオカミパパを始め、うちの両親まで興味津々だ。
森川 海
森川 海
私はクラスの友達と……
内海家 ママ
内海家 ママ
あら、そうなの〜?
お姉ちゃんがこっちにいた頃は
柊佑もよく一緒に行ってたんだけど。
お姉ちゃんが家を出てからは
全く行かなくなっちゃったのよね〜
……へぇ、オオカミ先輩ってお姉ちゃんがいるんだ。
キャン!キャンキャン!
内海 柊佑
内海 柊佑
なんだよ、福。
遊んで欲しくなったのか?
仕方ねぇな
森川 海
森川 海
あ、
───カタン、と小さく音を鳴らして席を立つと、オオカミ先輩は福を連れてリビングを出て行ってしまった。
内海家 ママ
内海家 ママ
海ちゃんも柊佑と行って来たら?
多分、福の散歩の時間だから
森川 海
森川 海
お散歩……!
わ、私も行ってきます。
ご飯、美味しかったです!
ご馳走様でした
内海家 ママ
内海家 ママ
ふふ、仲良くね〜
オオカミママの助け舟もあり、なんとかその場を抜け出した私は急いで玄関を飛び出した。
***

角を曲がってすぐ、オオカミ先輩と福を見つけた私は叫ぶ。
森川 海
森川 海
福!オオカミ先輩……!
待って!
内海 柊佑
内海 柊佑
……?
ワンワン!
森川 海
森川 海
私も一緒に散歩して
いいですか……?
"好きにしろ"

それだけ言って再び歩き出した先輩の、斜め後ろくらいを歩く私。

不意に、歩き出した足を再び止めて、私に顔だけ振り向いた先輩。
内海 柊佑
内海 柊佑
……さっきの、
森川 海
森川 海
え?
内海 柊佑
内海 柊佑
花火大会、誰と行くわけ?
森川 海
森川 海
……せ、先輩には
関係ありません!
内海 柊佑
内海 柊佑
ある
森川 海
森川 海
な、なんでですか
内海 柊佑
内海 柊佑
……この間のキスの本当の理由
内海 柊佑
内海 柊佑
番犬に嫉妬したからだって
……言ったらどうする?
森川 海
森川 海
ど、どうするって
また、私をからかってる?
……絶対、騙されないんだから!

そう思うのに、見ているこっちが苦しくなるような切ない瞳に、何も言えなくなってしまう。
内海 柊佑
内海 柊佑
誰にも渡したくない。
触れたい。
俺だけに笑って欲しい
森川 海
森川 海
……っ、
内海 柊佑
内海 柊佑
……なんて、な
再び前を向いて歩き出した先輩。

もしかしたら先輩も少しは私のこと……。
そんな淡い期待を抱いては、すぐにブンブンと首を横に振る。

先輩は、ふしだらなオオカミ。
騙されたら食べられちゃう、危険なオオカミ。

───だけど。
さっきの言葉が、全部本当ならいいのにって思ってしまう私はやっぱり、そんなオオカミのことが好きで、きっとこの想いはもう止められない。

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