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第30話

〜柊佑3泊4日の修学旅行〜in北海道編③
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2022/07/24 09:00
丸山 梨花
丸山 梨花
……ちょ、海〜?
本当に大丈夫!?
控えめに言って全然大丈夫……ではない。

昨日はあれから一睡も出来ずに朝を迎えてしまった。朝起きたら先輩から『昨日はごめん、充電切れた』とだけメッセージが入っていたけれど。

私と電話する約束してたんだから、普通は電話かける前に充電確認しない!?とか。

あの女の人は誰!?とか。

聞きたいことも言いたいことも山ほどあるくせに、返信する気になれず……ダメだと分かりつつも既読無視してしまっている。

お昼にくれた電話も全く同じ理由で出なかった。
森川 海
森川 海
 ……やっぱり、
ふしだらオオカミなのは、
彼女が出来ても変わらないのかな
森川 海
森川 海
 もう、あれかな?
潜在意識……みたいなやつ?
丸山 梨花
丸山 梨花
ちょ、お経唱えてる!?
やばい……ついに壊れた
浮気だって決めつけてるわけじゃない。
少なくとも、私と付き合ってからの先輩は、私と正面から向き合ってくれたし……、先輩の私を想ってくれている気持ちだって、日々色んなことを通じて伝わっていた。

───だけど!!!
森川 海
森川 海
来る者拒まず、去るもの追わず
この3泊4日の修学旅行中に……
私から離れて息抜きしたくなったとか
先輩の過去を知っている分、あれこれと良からぬことを考えてしまう。
***

───修学旅行4日目の放課後。

今日はあんなに待ち望んでいたはずの、先輩が帰ってくる日。……なのに、私の気分は全く優れない。

会いたくないといえば嘘になるけど、今、先輩に会ってどんな顔をすればいいんだろう。

教室で先輩の帰りを待つと約束していたけど、このまま会わずに帰りたい気持ちでいっぱいだ。
内海 柊佑
内海 柊佑
森川 海
森川 海
───!!
お、おかえり……なさい
内海 柊佑
内海 柊佑
……ただいま。
つか、なんで連絡しても
返事くれねぇわけ?
電話しても出ねぇし
森川 海
森川 海
……そ、それは、
内海 柊佑
内海 柊佑
俺が留守の間、何かあった!?
……まさかまたあの番犬に、
森川 海
森川 海
ち、違う!
……私は何もないよ。
それより、先輩の方こそ
内海 柊佑
内海 柊佑
……俺?
森川 海
森川 海
2日目の夜……電話、
楽しみにしてたのに
俯いたまま、柊佑くんの顔を見ようとしない私に、先輩はゆっくりと近づいてくる。
内海 柊佑
内海 柊佑
その事なら、悪かった。
充電切れて……
森川 海
森川 海
それだけじゃない!
……電話の向こうから聞こえたの。
女の人の声で"柊佑"って呼んでた
内海 柊佑
内海 柊佑
……!
内海 柊佑
内海 柊佑
もしかして、
それでずっと怒ってた?
森川 海
森川 海
先輩のこと信じたいのに
信じきれてない自分がいて
モヤモヤして、苦しかった……
内海 柊佑
内海 柊佑
っ、
───ギュッ

突然、強く強く抱きしめられて、苦しさから身をよじる。
森川 海
森川 海
せ、せんぱい……?
内海 柊佑
内海 柊佑
悪い、不安にさせて。
そんなこと気にしてるなんて
……思ってもみなかった
森川 海
森川 海
そりゃ気にするよ……。
先輩が好きなんだから
内海 柊佑
内海 柊佑
〜〜、やべ。
久しぶりの海、
可愛すぎて心臓痛い
内海 柊佑
内海 柊佑
……海が聞いた女の声なら
多分、俺の姉貴
森川 海
森川 海
……えっ?
内海 柊佑
内海 柊佑
3つ上で北海道の大学行ってて。
修学旅行で俺が北海道にいるって
母さんから聞いたらしくて、
わざわざ面会しに来たんだよ
……そういえば、先輩にお姉さんがいるって、前に内海家で食事会をしたとき、オオカミママが言ってたっけ。
内海 柊佑
内海 柊佑
本当はホテルで充電しながら、
海と電話する予定だったのに。
……伝える前に充電切れて
"不安にさせてごめん"

ギュッと私を抱きしめる先輩の腕に、肩の力が抜けていく。

……なんだ、そうだったんだ。
森川 海
森川 海
……ごめんなさい、私
先輩のこと信じて待てなくて
内海 柊佑
内海 柊佑
……まじ、返事くれねぇし
電話に出ねぇし。
嫌われたのかと思って焦った
森川 海
森川 海
完全に、私の勘違いで
……ごめんなさい
内海 柊佑
内海 柊佑
んじゃ、これで仲直りってことで。
……このまま海のこと食べていい?
森川 海
森川 海
……えっ!?ひゃ、
ひょいっと机の上に私を座らせて、首筋に顔を埋めながらワイシャツのボタンを素早く外していく。
森川 海
森川 海
ちょ、……ん!
まっ、待て!
内海 柊佑
内海 柊佑
待てるわけねぇじゃん。
そんな上目遣いで煽られたら
森川 海
森川 海
〜〜っ!
オオカミ先輩は、どこまでもふしだらに甘く囁いて、私の思考回路を簡単に破壊する。

相変わらず"マテ"はできないけれど、こんなオオカミ先輩を手懐けられるのはきっと世界中、どこを探したって私だけ───。





【END】

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