第3話

オオカミのピンチに
19,462
2022/01/16 09:00
───放課後。

結局、今日はオオカミ先輩を手懐けるどころか、逃げられっぱなし。

おまけに、午後はオオカミ先輩の姿さえ見つけ出せないまま放課後になってしまった。

動物に懐かれないことは、もはや認めざるを得ない事実だけれど。言葉の通じるオオカミさんとすら、まともなコミュニケーションが取れない私って……。
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
はぁ!?
1人反省会をしながら生徒玄関を出た私に聞こえてきたのは、怒気を含んだ女の子の声。

思わず、パッと顔を上げれば、少し先にある中庭の入口で、こちらに背を向けて立つ、派手な女の子を見つけた。
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
私は柊佑が好きなのに!
どうして柊佑は、いつまで経っても
私を好きになってくれないの!?
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
都合のいい女はもう嫌なの!
……"柊佑"

その名前に、ピクリと肩が跳ねる。

まさか、女の子の向こう側に見える人影は、「来る者拒まずで誰でも食べちゃう」例の彼がいるのだろうか。

怖いもの見たさで、チラリと覗き込めば、
森川 海
森川 海
やっぱり……
そこにいたのは、"心底面倒くさい"とでも言いたげに壁にもたれて女の子を見下ろすオオカミ先輩だった。
内海 柊佑
内海 柊佑
誰が好きになってくれって頼んだ?
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
……っ!
内海 柊佑
内海 柊佑
"後腐れのない関係"
……最初に約束しただろ?
内海 柊佑
内海 柊佑
俺は、誰のことも好きにならない
冷めた声で吐き捨てたオオカミ先輩。
派手な女の子が目に涙を浮かべ、その右手を高く振り上げるのが見えた時……
森川 海
森川 海
あ、っ危な……!
私は咄嗟にオオカミ先輩の前に飛び出していた。


───バチンッ
森川 海
森川 海
……いっ、
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
───!!
内海 柊佑
内海 柊佑
───!?
頬を襲う痛みに悶絶しながら、その場にズルズルうずくまる。
柊佑の遊び相手
柊佑の遊び相手
な、なんなのよ!
勝手に飛び出してきたのは
そっちだからね!!
不可抗力とは言え、私を叩いてしまった女の子は気まずそうに、その場を離れていく。

残るのは、ジーンと熱を持つ頬の痛み……と。
内海 柊佑
内海 柊佑
……フ、ハハッ。
バカだな、お前
オオカミ先輩の笑い声。
内海 柊佑
内海 柊佑
なんで俺なんかのこと庇った?
森川 海
森川 海
なんというか、
咄嗟に体が動いてしまって……
自分でもビックリしてます
内海 柊佑
内海 柊佑
俺を手懐けるために
体まで張るなんてな
森川 海
森川 海
……あ、今はそのこと
すっかり忘れてちゃってました
内海 柊佑
内海 柊佑
……お前の言う手懐けるって、
具体的に俺をどうしたいわけ?
内海 柊佑
内海 柊佑
俺を自分の言いなりにしたいとか?
森川 海
森川 海
……ち!違います!
そんなんじゃなくて、私はただ、
もっとこう……ちゃんとお互いに
コミュニケーションを取って、
森川 海
森川 海
お互いを知って、分かりあって、
もっと仲良く……そう!
私、仲良くなりたいんです!
内海 柊佑
内海 柊佑
……仲良く、ね
自分の中でも、ずっと引っかかっていた。
手懐けるって具体的にどうしたらいいんだろうって。

だけどオオカミ先輩に聞かれたことへの、答えが全てだった。

私、仲良くなりたいんです。
内海 柊佑
内海 柊佑
いいよ、考えとく
森川 海
森川 海
あ、ありがとうございます!!

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