第26話

夜の公園
7,696
2022/06/26 09:00
───ドーン!!!

打ち上がる花火に、歓声が上がる。
私の隣にはスッキリした顔の原くんがいる。
原 蒼真
原 蒼真
どうしてもハッキリさせてから、
スッキリした気持ちで見たくて
森川 海
森川 海
……うん
原 蒼真
原 蒼真
返事延ばしたり、
勝手に終止符を打ったり。
……振り回してごめん
森川 海
森川 海
ううん。
……むしろ、ありがとう
森川 海
森川 海
1人じゃないって
幸せなことなんだなって
森川 海
森川 海
原くんがいてくれたから、
いつも心強かった
原 蒼真
原 蒼真
これからも、
それは変わらないよ。
いつだって俺がいるから!
もちろん、最高の友達として
原くんがいなかったら、私はもっと1人で悩んでたと思う。

原くんが気づいてくれなかったら、もしかしたら私は1人で泣いてたかもしれない。
森川 海
森川 海
私を好きになってくれて
ありがとう、原くん
原 蒼真
原 蒼真
こちらこそ、俺に
大切な気持ちを教えてくれて
ありがとう、森川
───ありがとう。
ヒツジを守ってくれる牧羊犬はもういないけど、大丈夫。ヒツジだって、オオカミときっと仲良くなれるから。
***

最後の花火を見終えた私は、原くんと別れて家路に着いた。

もう20時。
辺りはすっかり薄暗くて、ポツリ、ポツリと灯る街灯と月明かりだけが私を照らしてくれる。
ワンワン!!
森川 海
森川 海
え、福!?
突然、犬の鳴き声が聞こえて辺りを見回す。

まさかこんな時間にいるわけないか……そう思いながら声のする方に早足で進めば、
内海 柊佑
内海 柊佑
…………
ワンワン!!
森川 海
森川 海
オオカミ先輩……?
それにやっぱり、福!
マンションの前に立ち、私へと視線を向けたオオカミ先輩と、 その足元に福の姿を確認して、私は慌てて駆け寄った。
森川 海
森川 海
なんで、こんなところに?
内海 柊佑
内海 柊佑
……散歩
森川 海
森川 海
もう20時だし、
家も反対方向なのに……
もしかして、私の帰りを待っててくれた?なんて、都合のいい解釈をしてニヤける。

原くんとの関係が解消されて、心のモヤモヤが無くなった今、オオカミ先輩と会えたことがこんなに嬉しいなんて、どうかしてる。
キャン!キャンキャン!
森川 海
森川 海
……わ、なに?
福ってば遊んで欲しいの?
私の着ている浴衣の裾に擦り寄って、一生懸命遊んでくれと訴える福の頭を撫でて、
森川 海
森川 海
オオカミ先輩、
少しだけ公園行きません?
気付けば、そんな提案をしていた。
***

公園について、一通り福と遊んでから、私たちはベンチに並んで腰掛けた。
内海 柊佑
内海 柊佑
例の番犬と行ったんだろ?
……今日の花火大会
森川 海
森川 海
はい。出店が沢山あって、
すごい賑わってましたよ
森川 海
森川 海
……先輩は?女の子たちと
行かなかったんですか?
内海 柊佑
内海 柊佑
好きでもない女と
花火なんか見ても仕方ないだろ
森川 海
森川 海
……先輩でも、
そんなこと思うんですね
内海 柊佑
内海 柊佑
……俺のことはいい。
それより、お前は?
番犬と付き合ってんの?
森川 海
森川 海
……いいえ。
原くんとは、今までも
これからも良きお友達です
内海 柊佑
内海 柊佑
は?
……だって、あの日!
森川 海
森川 海
え?……あの日?
ハッとしたように口を噤んだオオカミ先輩を不思議に思いながら見つめ続ければ、観念したように再び口を開いた。
内海 柊佑
内海 柊佑
たまたま、アイツがお前に
告白してるの聞こえたんだよ
森川 海
森川 海
───!
き、聞いてたんですか……
内海 柊佑
内海 柊佑
あの日、お前に会える気がして、
わざわざ1年の教室まで行った
森川 海
森川 海
……え?
内海 柊佑
内海 柊佑
アイツに告白されてるお前を見て、
ただ逃げるようにその場を離れたこと
……ずっと、後悔してた
森川 海
森川 海
……な、なんで、ですか
全然私の目を見てくれないオオカミ先輩の横顔。

どこか照れているような、それでいて寂しさを含んだその顔に、私の気持ちは今にも溢れ出してしまいそうだ。

───お願い、先輩。こっち向いて?

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