───ドーン!!!
打ち上がる花火に、歓声が上がる。
私の隣にはスッキリした顔の原くんがいる。
原くんがいなかったら、私はもっと1人で悩んでたと思う。
原くんが気づいてくれなかったら、もしかしたら私は1人で泣いてたかもしれない。
───ありがとう。
ヒツジを守ってくれる牧羊犬はもういないけど、大丈夫。ヒツジだって、オオカミときっと仲良くなれるから。
***
最後の花火を見終えた私は、原くんと別れて家路に着いた。
もう20時。
辺りはすっかり薄暗くて、ポツリ、ポツリと灯る街灯と月明かりだけが私を照らしてくれる。
突然、犬の鳴き声が聞こえて辺りを見回す。
まさかこんな時間にいるわけないか……そう思いながら声のする方に早足で進めば、
マンションの前に立ち、私へと視線を向けたオオカミ先輩と、 その足元に福の姿を確認して、私は慌てて駆け寄った。
もしかして、私の帰りを待っててくれた?なんて、都合のいい解釈をしてニヤける。
原くんとの関係が解消されて、心のモヤモヤが無くなった今、オオカミ先輩と会えたことがこんなに嬉しいなんて、どうかしてる。
私の着ている浴衣の裾に擦り寄って、一生懸命遊んでくれと訴える福の頭を撫でて、
気付けば、そんな提案をしていた。
***
公園について、一通り福と遊んでから、私たちはベンチに並んで腰掛けた。
ハッとしたように口を噤んだオオカミ先輩を不思議に思いながら見つめ続ければ、観念したように再び口を開いた。
全然私の目を見てくれないオオカミ先輩の横顔。
どこか照れているような、それでいて寂しさを含んだその顔に、私の気持ちは今にも溢れ出してしまいそうだ。
───お願い、先輩。こっち向いて?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!