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第11話

夏恋 / arok(ntr)
299
2020/11/21 18:44



夏祭りの夜だった。







こんなロマンチックな日に仕事だなんて



どんだけ仕事人間なんだよと思う。









でも今日は


ちゃんと病院に残っていて良かったのかも。













看護師「名取先生!!夜宮さんが部屋にいません!!!」




「はっ、?!...はい、分かりました探しましょう」








専用の電話から音がした。








あーあー何やってんだよアイツ。








問題児め。








他の看護師にも探すよう指示を出した。












大丈夫だろうか。



ほんとに何やってんだアイツは。





あー病院の廊下こんなに走ったらダメなのにな。



でもそんな事どうでも良くて。










「...はぁ、もうどこ行ったんだよ...」







なんて少女漫画にありそうな台詞呟いて。



いつからこんな台詞言うようになったんだよ俺。








少女漫画みたいに部屋からいなくなるなんてさ、


はぁ、大人しく部屋から祭りの花火でも見とけよ...







「っ...花火...見れるとこ...」



























勢いよくドアを開けた。




夜の涼しいような生暖かいような


風が俺の頬を撫でた。





当たりを見渡す。



誰もいない。







『あれっ?颯馬せんせ?』








上から声がした。



さっきからずっと探し回ってた彼女がいた。









「おまっ...みんな探し回ってるんだぞ?」





『え...あ、ごめんなさい...』








屋上の、もう一段上のスペースにいた


アイツが...あなたが、


申し訳なさそうにこっちを見た。







電話で院内のスタッフに


夜宮さんが見つかったと報告した。








『先生もこっち来てよ』






さっき申し訳なさそうな顔してると思ったら


そんなこと言い出した。



本当に反省してんのかこいつは。







「はぁ?早く降りてこい、迷惑だぞ」




『いいから早く!ほら!始まるから!!』








なんて言って、


サッと降りてきたと思ったら


腕を捕まれ俺も連れていかれた。







あーあまだ俺仕事中なんだけどな。






上に着くと同時に


遠くから音がした。







『ほらほら!!見てみて!!』



「......」







綺麗だあなぁ...と不覚にも思って。



その花火を見るあなたも


キャッキャキャッキャと楽しそうで。




これ以上怒る気になれなかった。









『ねぇ先生、このお祭りのジンクス知ってる?』





あなたが突然声を出した。


こいつ、そういうの興味ありそうだなー


とか思いながら




「さぁ?」




と答えた。






すると突飛押しもないこと言い出すんだから



反応が出来なかった、遅かった。











『先生、手術成功したらさ、私と付き合ってよ』




































『名取先生?』







急に苗字で呼ぶから。




驚いて直ぐに反応が出来なかった。








なんだかあなたに会ってから


俺らしくねぇな〜と思うことが多い。




あの時もそうだったな、なんて。



















「何言ってんだよ苗字同じなくせに」











まあ、ジンクス知ってて


あの返事をしたのは俺らしいか。














夏祭りの花火を一緒に見た男女は


永遠に結ばれるって。



なんてベタな。

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