病室の扉をガラッと開ける。
窓際に一松が眠っていた。
三人部屋なんだけど、二つのベッドは使われていなくて、一人部屋みたいだ。
俺達は一松に駆け寄る。
包帯を頭にぐるぐるにして、眠っていた。
まつ毛が長く、とても綺麗だ。
みんなから安堵の息が漏れる。
十四松は、いつになく、真剣。
そりゃそうだ。
相棒がやられてるんだから。
さすが俺の相棒。
鋭い。
自分の声が、小さくなっていくのがわかる。
弟を守れないなんて、
ホントに、
ダメな長男だよなぁ。
すると、カラ松が肩に手を置いて、
返事が声にならない。
泣いてんのかな……俺。
俺達は急いでベッドの上を覗き込む。
すると、目がだんだん開いてきて……
口々に一松を呼んだ。
末が出ていく。
声で制し、俺とカラ松が聞いたことを優しく繰り返した。
うそ……だろ?
覚えて……ない?
口調も、一人称も違う。
言葉だけ、別人みたいだ。
今言ったとこは、殴られたとこ。
足は……最初に蹴られた時か?
カラ松が蚊の鳴くような声で呟く。
認めたくなかった。
認めたくなかったことを。
ガラガラ
すると、末二人、父さんと母さん、そして先生が病室に入ってきた。
先生は、十四松に引っ張られて来たのだろう。
白衣の袖がヨレヨレだ。
一松は、次々に入ってくる人に驚いた様子。
一松は答えない。
もしかして、分からない?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。