第18話

また
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2019/09/28 01:14
病室の扉をガラッと開ける。


窓際に一松が眠っていた。


三人部屋なんだけど、二つのベッドは使われていなくて、一人部屋みたいだ。


俺達は一松に駆け寄る。


包帯を頭にぐるぐるにして、眠っていた。


まつ毛が長く、とても綺麗だ。


みんなから安堵の息が漏れる。
トド松
トド松
さて、おそ松兄さん、説明して貰おうか
おそ松
おそ松
えっ
十四松
十四松
一松兄さん、なんでこうなったの?一緒のクラスて一緒に帰って、知らないはずがないよね?
十四松は、いつになく、真剣。


そりゃそうだ。


相棒がやられてるんだから。
チョロ松
チョロ松
おそ松兄さんも少し怪我して、喧嘩?
さすが俺の相棒。


鋭い。
おそ松
おそ松
他校の……一松の前の学校のやつらが、仕掛けてきて……一松がやられた
トド松
トド松
前の学校って!すごく遠いじゃん!
おそ松
おそ松
修学旅行だってよ
十四松
十四松
おそ松兄さんは何してたの?
おそ松
おそ松
反撃してたんだけど、一松を守れなくて……
自分の声が、小さくなっていくのがわかる。


弟を守れないなんて、


ホントに、


ダメな長男だよなぁ。


すると、カラ松が肩に手を置いて、
カラ松
カラ松
自分を責めるな。一松は大丈夫だから
おそ松
おそ松
……ん
返事が声にならない。


泣いてんのかな……俺。
一松
一松
……んぅ
十四松
十四松
一松兄さん!
おそ松
おそ松
……え?
トド松
トド松
どうしたの?十四松兄さん
十四松
十四松
一松兄さんが、喋った……!
俺達は急いでベッドの上を覗き込む。


すると、目がだんだん開いてきて……
おそ松
おそ松
一松……!
カラ松
カラ松
一松
チョロ松
チョロ松
一松!
十四松
十四松
一松兄さん!
トド松
トド松
兄さん!
口々に一松を呼んだ。
一松
一松
……え……と
十四松
十四松
あ、僕達、先生に知らせてくるね!
末が出ていく。
おそ松
おそ松
一松!大丈夫か!
カラ松
カラ松
痛いとこはないか!?
チョロ松
チョロ松
まだ起きたばっかなんだから、一松大丈夫?痛いとこない?
声で制し、俺とカラ松が聞いたことを優しく繰り返した。
一松
一松
え……と……誰?
おそ松
おそ松
……え?
カラ松
カラ松
……は?
チョロ松
チョロ松
……あ?
一松
一松
そもそも、なんで俺病院にいんの?お前らがここにいるってことは、なんか知ってんだろ?俺はお前らのことなんか知らねえけど
うそ……だろ?


覚えて……ない?


口調も、一人称も違う。


言葉だけ、別人みたいだ。
一松
一松
あ、さっきの質問に答えるけど、喋れるから大丈夫なんじゃない?あと、足と腹と頭が痛い
今言ったとこは、殴られたとこ。


足は……最初に蹴られた時か?
一松
一松
俺、なんも覚えてない。はっきり言って、今ここで目覚めたことしか記憶がない
カラ松
カラ松
また……記憶喪失なのか……?
カラ松が蚊の鳴くような声で呟く。


認めたくなかった。


認めたくなかったことを。
ガラガラ
すると、末二人、父さんと母さん、そして先生が病室に入ってきた。
先生
十四松くんだっけ?そんなに引っ張らなくても大丈夫だからね?
十四松
十四松
でも一松兄さん!
松代
松代
十四松、もう病室着いたから、離しなさい
十四松
十四松
あい!
先生は、十四松に引っ張られて来たのだろう。


白衣の袖がヨレヨレだ。
一松
一松
!?
一松は、次々に入ってくる人に驚いた様子。
先生
一松くん、自分の名前を言ってごらん
一松
一松
えっと、一松……
先生
上の名前は?
一松
一松
……
一松は答えない。


もしかして、分からない?
先生
やはりそうだったか
松代
松代
そう、って?
先生
一松くんは、また、記憶喪失になりました

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