今日も、あの夢を見た。
暗闇の中、独りでいる。
でも、今日は、少し違う。
誰かが、いた。
俺は、そいつに声をかけた。
そいつは、ビクッとして、振り向く。
そこにいたのは、
俺だ。
そいつは、ホッとしたように呟く。
俺は、信じられなかった。
こいつは、自分がいるってのに、気づいてないのか?
毎日、鏡で見る、窓で見る、自分の顔。
それが、こいつと同じ。
そうだ、さっきの質問に、答えねば。
こんなひ弱そうに見えて、喧嘩するのか!?
でも、鉄パイプって……。
俺が、気がついて、何もかも忘れていた俺に、兄弟達が教えてくれた、こうなった理由。
それが、鉄パイプに殴られたって……。
やっぱり。
やっぱり、困惑するよなぁ。
俺は、彼を座らせる。
俺は頷く。
その時、
誰かが来た。
小学生ぐらいだろうか?
その子は、頷く。
つまり、状況を整理すると、
ここには、三人の俺がいて、
一人は、産まれてから、小学生ぐらいまでの記憶がある俺。
もう一人は、そこから、鉄パイプで殴られるまでの記憶がある俺。
もう一人は、そこから、今までの記憶がある、俺。
いちばん初めに反応したのは、今まで黙っていた、俺より一つ前の俺。
そう言って、俺を指さした。
え、記憶の……世界?
へぇ。
ひとつ前の俺は、どこかホッとした用だった。
言われるままに、繋ぐ。
暗かった目の前が真っ白になった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!