今は、下校中。
おそ松兄さんは帰宅部部長(自称)だし、僕もまだ部活には入っていない。
おそ松兄さんが手を合わせる。
そんなの、自分の身にならない。
そんな事を駄弁っていたから、角から出てきた人に気づかなかった。
ドンッ
この声は……前の学校の……。
僕を……いじめていた奴……。
体が固まる。
なんで……?
なんでこんなとこに……?
言葉が……出ない……!
淋しかった、というのは、「オモチャ」がいなくなってだろう。
動け!
動けよ俺!
ここから、早く逃げ出さないと……!
前の学校は、三年は受験生だからと、二年が修学旅行に行くんだ。
旅行先は、東京。
でも、ここは範囲じゃないはず……。
あ、そうだ。
こいつら、抜け出したんだ。
前の学校は男子校。
先生にバレなければ抜け出すことなんて簡単なんだ。
ここが分かったのも、僕が転校するってみんなに伝えた時、先生は東京の赤塚まで言っていたから……。
ドガッ!
いつの間にか後ろに周っていた奴から、背中を思いっきり蹴られる。
そいつらがさっき出てきた、路地裏に思いっきり入る。
僕は勢いで倒れてしまった。
ドガッ!
おそ松兄さんも同じ様に蹴られた!
僕の横に倒れる!
ガスッ!
腹を蹴られた。
ダメだ。
もう起き上がれない。
そして、ガハハハッ!と下品に笑う。
おそ松兄さんは起き上がる。
僕は、力を込めるとお腹が痛くなって無理だ。
ガスッ!
その音に、僕は思わず目を瞑る。
きっと、おそ松兄さんが殴られたんだ!
……あれ?
この声……。
ということは、殴ったのはおそ松兄さん……?
僕はそっと目を開ける。
ヤバい!
おそ松兄さんが今度こそ殴られる!
でも……
おそ松兄さんが……拳を手で受け止めたんだ。
そのまま、腕を引いて膝を上げる。
そいつの腹に膝がめり込んだ。
おそ松兄さんが手を離す。
ドサッ……
そいつが倒れた。
あ!
残りが総出でおそ松兄さんもに殴りかかった!
相手は五人!
不利だ!
でも……
僕は助けられない……。
力がない……。
今度こそ、絶体絶命!
おそ松兄さんは、この状況を……
楽しんでいる……。
おそ松兄さんは飛んできた拳の腕を掴み、背負い投げ!
その勢いで、もう一人を道連れに。
続いて、またも飛んできた拳を屈んでよけ、足をはらう。
そいつが倒れたら、横っ腹に蹴りこむ。
おそ松兄さんに倒されたヤツらは、動かない。
一つ一つの攻撃が、重いんだ。
グイッ!
襟を引っ張られた!
くっ、苦しい……!
残りの二人が、僕を人質に取ったんだ。
二人に、首を掴まれて持ち上げられている状況。
手には、二人とも、鉄パイプが……。
こいつら、武器を持ったことで強くなったって勘違いしてるんだ。
さっきおそ松兄さんが三人も倒したの見なかったのかな?
って言うか、なんでこういう所に、鉄パイプなんて落ちてるの?
こんな状況にも関わらず、冷静に考えてしまった。
首が痛い。
苦しい。
どうにかして抜け出さないと。
でも、どうやって?
僕には力がない。
おそ松兄さんがこっちに向かって突進してきた!
予想外の動きに、二人は動けないよう。
おそ松兄さんは跳んで、二人を蹴り飛ばす。
僕も首の手が外れた!
外れたから、よろめく。
ドサッ
おそ松兄さんが受け止めてくれた。
アイツらの声がする。
跳びながらの攻撃だったから、気絶しなかったんだ!
ガスッ!
頭が勝ち割れるような衝撃と、鈍い音がして、
目の前が真っ白になった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。