一松……大丈夫かなぁ?
俺は、手で猫を作る。
一松……前は猫好きだったなぁ。
今も好きかな?
一松、ほんとに……大丈夫かなぁ?
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一松は、アイツらの持っていた鉄パイプに殴られた。
蹴りが甘かったのか、気絶はしていなかったんだ。
俺が気づいた時にはもう遅い。
一松は倒れた。
アイツらのに仕返しするなんて考えてなかった。
一松のことしか頭になかった。
俺は一松を抱き抱えると、直ぐに路地裏から出た。
一松は驚くほど軽かった。
首で持ち上げられたのにも納得が行く。
全力で走った。
公衆電話がある道路まで着くと、「119」で救急車を呼んだ。
しばらくして救急車が来た。
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今は病院のベンチ。
一松は検査を受けている。
父さんと母さんには病院側から、弟達には二人から、連絡が行くはずだ。
俺は立ち上がる。
あんまり、言いたくなかった。
だって、怒られるだろうから。
だから、黙っていた。
……ダメだ。
母さんには、かなわない。
父さんがなだめてくれている。
そのうちにまくし立てた。
母さんも、落ち着いたようだ。
俺は鍵を受け取ると、病院を出た。
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いつもの赤い松のイラストがプリントされたパーカーを着て、病院へ向かう。
ここら辺の大きい病院と言ったら、赤塚病院しかないから、迷わない。
病院に入ると、待合室に弟達の姿が。
うぉぉ、みんな揃えて……。
するとみんな、思い出したしたように手を打った。
俺達は受付に病室を聞くと、そこに向かった。
病院の番号は、「401号室」だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。