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十四松が、抱きついてきて。
誰かの、声が聞こえる。
それも、たくさん。
知っている。
懐かしい。
俺は、うっすらと目を開けた。
すると、
俺には、みんなが抱きついていた。
なんでみんな、泣いてるの?
みんなが顔を上げる。
みんな、顔が涙でぐしゃぐしゃになっていた。
いちばん酷いのは、十四松だ。
父さんと母さんも、ベッドの傍にいる。
ずっと?
言われて気づいた。
日付けも書かれたデジタル時計は、俺が最後に見た日から、三日は経っていた。
心配……。
俺は、信用してなかったのに。
十四松はずっと、泣いたまんま。
おそ松兄さんが、そっと言った。
すると、みんな、ビックリした様子で。
え?
そういえば。
この言葉に、他のみんなはビックリした様子で。
するとみんな、まるで時間が止まったかのように固まる。
え、どうしたの?
すると、目の前が暗くなった。
それは、みんなに、もっと抱きつかれたせいだった。
みんなおそろいで……。
でも、なんだろ……暖かい。
体の内側が、暖かい。
ホワホワするなぁ。
僕は、ひとりじゃないんだね。
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数日後、俺は退院した。
傷も完治し、もう病院には用がないんだと。
俺、あの、記憶の世界で、昔の俺がどうして知っているか、分かった。
あの空間は、俺が作った世界だから。
昔、一人だけになると、その世界に入る。
それがあったのか、今も一人になるのは好きだ。
でも、一つ前の俺に言いたいことがある。
もう俺は、ひとりじゃないよって。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!