病院に一人でいるって、ホンットに暇だ。
なんも出来ない。
暇つぶしになるような物も、持ってきていない。
でも、一日に一回は、必ず誰か来る。
兄弟……は、必ず。
この前は、クラスメイトが来た。
俺の、席の、近くだという男女二人。
俺が、入院したことはクラス中に伝えられたらしいけど、記憶喪失だという事はまだ言われてないらしい。
だから、対応に困った。
まず、名乗らない。
俺とどういう関係なのか、言わない。
年齢が近そうだったから、学校のやつかとは思ったけど。
おそ松も、俺と一緒のクラスらしいのに、なんも言わないんだもん。
そばで座って、ニヤニヤしてるだけ。
んで、最後の方で、おそ松が二人に俺が記憶喪失だって言った。
驚いてたな。
あと、おそ松はいつものように来る。
部活に入ってないらしい。
でも、これがいちばん困る。
おそ松は、なんもしない。
学校で配られた、プリントや宿題を届けて、終わり。
ずっと椅子に座ってる。
黙って。
俺は、宿題をやるんだけど、なんも仕掛けて来ないから、直ぐに終わってしまう。
宿題の丸つけが終わったところで、帰るんだ。
なんなんだろ?
今日は、チョロ松だけ。
チョロ松は、今日は部活がない日。
おそ松は、掃除当番だということ。
確かに
俺は、授業に出てないのに、分かるんだ。
簡単なはず。
それか、おそ松が劇的に頭が悪いのか?
あ、肯定なんだ。
俺は手を振る。
チョロ松が帰る。
なんでだろ?
疲れてないのに、ため息が出る。
チョロ松は、おそ松の事を、「おそ松兄さん」と呼んでいた。
他の兄弟も、上のやつを、「兄さん」を付ける。
変な話だ。
六つ子なんだから、年齢は一緒なのに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!