第5話

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2019/12/07 14:55
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《叶視点》

夕方になり、私は琴羽と別れて家へ向かった。まぁ、家って言っても病院だけど…。
 私の病気はね、琴羽に言ったよりもずっと悪い。本当は、ずっと病院で寝てなきゃいけないくらいに。だけどさ、ずっと病院ってのはつまらないじゃん?だから、いつもこっそり抜け出してるの。まぁ、バレてるっぽいけど。
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 病院に着いた。けど…。
叶の母
叶!!何やってるの?!抜け出しちゃダメって何回言ったらわかるの?!
ゲッ、お母さん…。
叶
ご、ごめんなさい…。
叶の母
あなたは私の大切な娘なの。良い子で病院にいてちょうだい。さぁ、病室に行くわよ。
叶
はい…。
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 夜遅く。私はふと目を覚ました。
叶
グッ…!!
胸が、心臓が痛い。苦しい。ナースコールを押さなければ、でも、そのとき私の頭の中に思い浮かんだのは…
叶
琴羽…!
私は、残ってる力で立ち上がり、壁をつたいながら歩き始めた…。
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叶
ハァッ、ハァッ、ハァッ…!!
呼吸が荒い。とても、苦しい。でも、この機会を逃したら、二度と琴羽には会えないだろう。それは、嫌だ。やっとできた私の友達。さよならも言わないで別れるのは絶対に嫌だ。
叶
だから、だから…私は、歩き続けるんだ…!
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 やっと、やっと着いた。私の友達がいる所。どれだけの時間がかかったのだろうか。そんなことはどうでもいい。

『トン、トン…』

私は神社のドアをノックした。お願い、出てきて…琴羽…。
叶
こと…は…。
ガラガラ、と、ドアが開いた。中から、私が会いたかった人が出てきた。
琴羽
琴羽
カナ?!なんでこんな時間にっ?!…ってどうしたの?!すごい具合悪そうじゃない!!
叶
ふふっ…お別れ、を…言いに…来た、の…よ…。
琴羽
琴羽
お別れ?!何を言ってるのよ?!ちょっと待ってて!あなたを病院に飛ばすから!そしたらすぐに病院の人呼ぶからね?!
叶
な…んで…入院してること…。
あ…ヤバい。目の前がぼやけてきた。すっごい眠い。
琴羽
琴羽
知ってるに決まってるじゃない!私は、この村の人を見守るのが役目なんだから!
ふふっ、琴羽はなんでも知ってるんだなぁ…。すごいなぁ…。でも、もう私ダメかも…。あぁ、すっごい眠い。ちょっとだけ、寝るね。おや…すみ…。

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