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《叶視点》
夕方になり、私は琴羽と別れて家へ向かった。まぁ、家って言っても病院だけど…。
私の病気はね、琴羽に言ったよりもずっと悪い。本当は、ずっと病院で寝てなきゃいけないくらいに。だけどさ、ずっと病院ってのはつまらないじゃん?だから、いつもこっそり抜け出してるの。まぁ、バレてるっぽいけど。
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病院に着いた。けど…。
ゲッ、お母さん…。
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夜遅く。私はふと目を覚ました。
胸が、心臓が痛い。苦しい。ナースコールを押さなければ、でも、そのとき私の頭の中に思い浮かんだのは…
私は、残ってる力で立ち上がり、壁をつたいながら歩き始めた…。
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呼吸が荒い。とても、苦しい。でも、この機会を逃したら、二度と琴羽には会えないだろう。それは、嫌だ。やっとできた私の友達。さよならも言わないで別れるのは絶対に嫌だ。
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やっと、やっと着いた。私の友達がいる所。どれだけの時間がかかったのだろうか。そんなことはどうでもいい。
『トン、トン…』
私は神社のドアをノックした。お願い、出てきて…琴羽…。
ガラガラ、と、ドアが開いた。中から、私が会いたかった人が出てきた。
あ…ヤバい。目の前がぼやけてきた。すっごい眠い。
ふふっ、琴羽はなんでも知ってるんだなぁ…。すごいなぁ…。でも、もう私ダメかも…。あぁ、すっごい眠い。ちょっとだけ、寝るね。おや…すみ…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。