第9話

487
2019/12/08 01:35
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《叶視点》
叶
あ…れ…?
私、なんで動けるんだ?それよりも…なんで生きてるんだ…?体は、とても軽い。さっきまで苦しんでいたのが嘘みたい。まるで、自分は病気なんかじゃなかったみたい。そういえば、夢を見たな。暖かい光に包まれている夢。光の色は、琴羽の毛色みたいな綺麗な金色だった。…もしかして。
叶
琴羽の、術…?
でもそんな術を使ったら、それなりの代償があるに違いない。前、琴羽から聞いた。術を使うには、魔力が必要だって。だけど、琴羽のことだからあり得る。あの、優しい琴羽ならば、自分の命よりも相手の命を優先するだろう。嫌な、予感がする。
叶
確認しなくちゃ…!
私は、今出せる精一杯の力で、点滴の管を引きちぎった。そして、急いで神社ヘ向かった…。
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 走れる。驚いた。走るのなんて、何年ぶりだろう。でも今、喜んでいる時間は無い。はやくしないと…。この目で、ちゃんと確認しなくちゃ…!
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 神社に着いた。ノックをしたが、誰かが出てくる気配は無い。扉は…開けっぱなしだった。扉を開くと、血の匂いがした…。
叶
琴羽?!
私は、悲鳴が混ざった声を上げた。琴羽から、返事は無い。私は、血の匂いがする方へ走って行った。そこは…。
叶
祭壇?
祭壇があった。そして、その前には…。
叶
こ…とは…?
身体中から血を流し、無惨な姿になって倒れている琴羽がいた。私は、恐る恐る近づいてみた。
叶
いやぁぁあああ!!!
私は、悲鳴を上げた。琴羽は、死んでいた。でもその顔は、とても安らかだった。
叶
ねぇ、嘘でしょ?!嘘って言ってよ、琴羽…!
倒れている友達は答えない。だって死んでしまっているから。私が、涙を流して泣いていると、一つの声が響いた。
琴羽
琴羽
カナ、こんばんは!やっぱり来たのね!
それは、もう聞くことのできないハズの声。声がした方を向くと…琴羽が立っていた。
叶
琴羽…!
私は琴羽に抱きつこうとした。だが、通り抜けてしまった。
琴羽
琴羽
カナ、ごめんなさい。これは幻影。私が死ぬ直前作り出した幻影なのよ…!
そ…んな…。
琴羽
琴羽
時間も無いからさっさと言うね。私はね、あなたに生きてほしいの。あなたは、私に初めて会ったとき、逃げ出したり差別しようとはしなかった。あなたは優しい人。それに、周りの人にも愛されてる。そういう人ってのは絶対に必要。それに、あなたがいなくなってしまったら私、真面目に死んじゃうもの。だからね、あなたには生きてほしいと思った。頑張って、私の分も生きてほしいと思ったの。あなたのことを見ていて思ったの。どんなことがあっても、頑張り続けるあなたならば、立ち直ることができるハズってね…。
私の目から、涙が溢れる。
琴羽
琴羽
…そろそろ時間だね。ありがとうね。カナ。私の友達になってくれて。そしてさようなら。私の大切な友達…!
琴羽の幻影は、光の粒子となって消えた。私は、泣いた。まるで、小さい子どものように。そして、言う。
叶
さようなら!琴羽…!!ずっと忘れないよ…!!

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