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《叶視点》
私、なんで動けるんだ?それよりも…なんで生きてるんだ…?体は、とても軽い。さっきまで苦しんでいたのが嘘みたい。まるで、自分は病気なんかじゃなかったみたい。そういえば、夢を見たな。暖かい光に包まれている夢。光の色は、琴羽の毛色みたいな綺麗な金色だった。…もしかして。
でもそんな術を使ったら、それなりの代償があるに違いない。前、琴羽から聞いた。術を使うには、魔力が必要だって。だけど、琴羽のことだからあり得る。あの、優しい琴羽ならば、自分の命よりも相手の命を優先するだろう。嫌な、予感がする。
私は、今出せる精一杯の力で、点滴の管を引きちぎった。そして、急いで神社ヘ向かった…。
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走れる。驚いた。走るのなんて、何年ぶりだろう。でも今、喜んでいる時間は無い。はやくしないと…。この目で、ちゃんと確認しなくちゃ…!
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神社に着いた。ノックをしたが、誰かが出てくる気配は無い。扉は…開けっぱなしだった。扉を開くと、血の匂いがした…。
私は、悲鳴が混ざった声を上げた。琴羽から、返事は無い。私は、血の匂いがする方へ走って行った。そこは…。
祭壇があった。そして、その前には…。
身体中から血を流し、無惨な姿になって倒れている琴羽がいた。私は、恐る恐る近づいてみた。
私は、悲鳴を上げた。琴羽は、死んでいた。でもその顔は、とても安らかだった。
倒れている友達は答えない。だって死んでしまっているから。私が、涙を流して泣いていると、一つの声が響いた。
それは、もう聞くことのできないハズの声。声がした方を向くと…琴羽が立っていた。
私は琴羽に抱きつこうとした。だが、通り抜けてしまった。
そ…んな…。
私の目から、涙が溢れる。
琴羽の幻影は、光の粒子となって消えた。私は、泣いた。まるで、小さい子どものように。そして、言う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。