季節は春の初め。暖かい太陽の光が、美しい桜の木に囲まれた神社に差し込む。それは、とても神秘的な光景だった…。
《琴羽視点》
私は起きて一番最初に大きく伸びをした…が、すぐ隣にある机に手をぶつけてしまった。
ぶつけた手は腫れてしまった。まぁ、いっか。後で直せばいいんだし。
ここは、天守神社っていう神社。代々狐人が継いでいっている古い神社なんだ。人間達の民話で出てくるみたいだね。この神社はね、人間は来れないんだよね。うん。昔は人間でも来れるようになってたみたいだけどさ、私の先祖、当時の巫女を退治しようとかって言う奴らが現れたんだって。だから、困った当時の巫女は術で神社の姿が見えないようにしたんだって。それ以来私達巫女は人間達を隠れて見守るようになったんだ。
さっ、お話はそろそろおしまいにしよっか…。
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だいぶ時間が経ってお昼頃になった。
私の狐耳が人間の足音を聞き取った。数は、一人だろうか。まだ遠くにいるみたいだが、確実にこちらへ近づいてきている。これは、はやく神社の中に入らないとだ。バレちゃ不味いもの。でも、何故こんな山の上に人が…?集落もあるが、あるのは山の麓だ。うぅ、少し気になってきてしまった。よし!じゃあ、大きな桜の木に登って少し観察してみよう!見つからなければ問題無い!
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しばらくして、女の子がこちらへやって来た。迷子かな?もう少し様子を見てみよう
お?桜の木を褒めてくれたぞ?私が面倒を見ているから嬉しいのだ!…って、あれ?女の子の様子が変だぞ?
おいおいおいおい、ちょっと待った!今、神社って言わなかった?!って、あ!神社の目の前まで来ちゃってるよ!待って!待ってぇ~!!しょうがない!
『ザッ!!』
私は、桜の木から飛び降りた。怪我はしないから大丈夫だ!
お母様…先代の巫女の話し方を真似してみた。
私達はまだ、わからない。私達のこの出会いは、私達の運命を大きく変えることになるってことに…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!