◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
《叶視点》
大きな桜の木の下にある神社。手入れを者はおらず、少し古びた感じがする。その神社の桜の木の前に私はいる。木のすぐ根元には、お墓があった。たくさんの美しい花が添えられたお墓。そこに眠るのは、私の大切な友達。十年前、私を助けて死んでしまった狐のあの子。短い間だった。けれども、あの子との思い出はたくさんある。絵を描いて、お話をして…十年経った今も、しっかりと覚えている。
今年で私は二十五歳になった。あの後、辛いこともたくさんあった。でも、いつも心の中にいるあなたが応援してくれた。あなたがいたから私はここにいる。
私は、にっこりと笑った。
今日は私とあなたが出会った日のような、暖かい春の風が吹く日。あなたは、あの頃のように私の隣で笑っているのだろうか。風で桜の花弁がひらひらと舞い降りてくる。私は、呟いた。
『さようなら。そしてありがとう。私の大切な友達…。』
風はさらに強くなっていく。迷子の子猫が『ニャー』と、鳴いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。