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《叶視点》
大きな桜の木の下にある神社。手入れを者はおらず、少し古びた感じがする。その神社の桜の木の前に私はいる。木のすぐ根元には、お墓があった。たくさんの美しい花が添えられたお墓。そこに眠るのは、私の大切な友達。十年前、私を助けて死んでしまった狐のあの子。短い間だった。けれども、あの子との思い出はたくさんある。絵を描いて、お話をして…十年経った今も、しっかりと覚えている。
今年で私は二十五歳になった。あの後、辛いこともたくさんあった。でも、いつも心の中にいるあなたが応援してくれた。あなたがいたから私はここにいる。
私は、にっこりと笑った。
今日は私とあなたが出会った日のような、暖かい春の風が吹く日。あなたは、あの頃のように私の隣で笑っているのだろうか。風で桜の花弁がひらひらと舞い降りてくる。私は、呟いた。
『さようなら。そしてありがとう。私の大切な友達…。』
風はさらに強くなっていく。迷子の子猫が『ニャー』と、鳴いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。