あなたside
久しぶりに丈の弱音を聞いた気がして、少しだけ
胸が苦しかった。
でも、馬鹿は馬鹿。
だって、馬鹿だから。
『 あのさあ、私が今なんで寝っ転がれてるか知ってる? 』
藤原〈 暇人 〉
『 はっ倒すぞ 』
藤原〈 ふっ笑笑 〉
『 はあ。 ... 今まで、信じてきたからだよ、メンバーを 』
藤原〈 ... 俺やって、信じとるし 〉
『 違う。今、丈が思っているのはデビューが出来るか出来ないかでしょ 』
藤原〈 そりゃあ ... 〉
『 私は、いつだってメンバーに身を任せてきた。デビューだって諦めてたし、ブレイク出来ないと思っていた。でも今、ごろごろ出来てるのはメンバーに身を任せていたからだよ。だから私はデビュー出来た。ブレイク出来た。それまで私、女なのに全然認知度無かったじゃん笑 』
藤原〈 ... おん、 〉
『 信じなさい、メンバーを。私は丈なら絶対にデビュー出来ると思っている 』
藤原〈 ... 俺がほんとは小心者だって事ぐらい、あなたなら知っとるやろ 〉
『 知ってる。だからこれは、私からのお願い。メンバーを、信じなさい 』
藤原〈 ... 分かった。あなたが求めてるのは、俺のデビューなん? 〉
『 ううん。私は、丈が幸せならデビューでも解散でも脱退でも退社でもいい。でも私は、丈の幸せはデビューなんだと思っている 』
藤原〈 ... 俺な、辞めようかって思ってん 〉
『 ... そう、 』
藤原〈 でも、やっぱ考え直すわ。あなたの為に 〉
『 そだね、頑張れ 』
藤原〈 せや、俺からもお願いしていい? 〉
『 なーに? 』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!