第3話

あの日の後悔。1
60
2019/09/22 10:35
「今年は泣かないって決めたのに……なんでそんなに俺のこと気にかけてくれたんだよ…」


作文の端に書かれた文字を見ながら呟いてしまう。


「俺……あの日、お前と話した"夢"、諦めようとしたんだぞ」


「なのにさ…新汰は優しすぎるんだよ…最後の最期まで」



"俺の親友、充の夢が見つかって、叶いますように"
作文の端に青いペンで書かれていたその文字は小学生の書いた字ではなく、高校生になって書き足したであろう新汰の字。



「小学生の時の約束、ずっと覚えててくれたんだよな…」


泣きながら思い出したのは、"あの日"の悲しく辛かった出来事。


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「もういいんだよ!!」


響いたのは、俺の弱い気持ち。


「こんなにやっても、ダメなんだ。諦めろって意味だよ…」


「今まで頑張ってきたのに今更諦めるってなんだよ!?充!!俺達頑張ってきたじゃん!!」


高校一年生の時久しぶりにした、口喧嘩。
俺は小学生の時新汰と話した夢を追って必死に勉強し、高校生になってから大学受験でつまづかないようにと入学当時から頑張って勉強をしていた。希望の大学は勿論動物について学べる専門学校。
だが、頑張って勉強しても伸びなかったのだ。自分の勉強方がおかしいと考え、色々なことを試したのだがダメだった。
新汰も相談員という夢に憧れ続け勉強を頑張っており、新汰はぐんぐん成績を上げていった。


同じだけ努力して、頑張ったのに。なんでなんだよ。


「お前は成績上がってんじゃん……俺は上がらないんだよ……何をしても!!」


「だからもう俺の勉強について話してくんな!!!」


「っ…ごめん、充。言いすぎた……今日は1人で帰るよ」


「っ…あ……」


違う、新汰は悪くない。
悪いのは勝手に嫉妬した俺だ。



8月の終わり、俺と新汰は喧嘩をした。



それから、新汰は勉強のことに関して全く触れてこなくなったんだ。話してくれるのは楽しいことだけ。今思えば新汰なりの思いやり。
それでもモヤモヤした気持ちが晴れなかった俺は、勉強をし続けた。
何を目標にやっているのかわからないまま。

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「あの時の俺は、お前に嫉妬をしていたんだ。……本当は助けてほしかった……」


本当は苦しくて、家で一人で泣いていた。
新汰に当たった悔しさと情けなさで泣いた日もあった。


「…もう一度……もう一度だけ会えたら、お前にちゃんと謝りたい…のに……」


あの楽しかった日は帰ってこない。



そして9月の終わり、新汰に会うことができなくなるなんて。


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– ドンッ–



鈍い音と一緒に激痛が走った。
朦朧とする意識の中で分かったことは


"自分は死んでしまう"ということ。


あぁ、なんて短い人生なんだろう、まだまだ長い人生だって母さんも言っていたのに。
弟だっている、悲しむ顔なんて見たくない。


生きたかった。
充と話した"夢"だけでも叶えたかった。
まだまだ沢山話したいことがあるのに…このまま死んだら充が後悔してしまう………生きたい……あと少しだけ…






お願いだから。








真菰 新汰まこも あらたは伝えたい。









"充の所為じゃない"と伝えたい。










"夢を諦めないで"と伝えたい。

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