『20時に駅前の公園のベンチで待ってる』
カラオケを終えて何気なく携帯を取り出すと、一通のメールが届いていて。
達也からだ…。
待ち望んでいた達也からの連絡に心臓がドクンっと震える
もう19時50分
達也が指定した時間まであと10分しかない。
相手を待たせるのは平気だけど待つのが嫌いな達也
少しでも遅刻すれば怒って帰ってしまうだろう
このチャンスを逃せば、きっと二度目はない。
携帯のディスプレイに釘づけだった私にナナは不満げな声を漏らす。
ナナだって言ったじゃん。
あんな男と別れて正解だって。
自分だってそう思ってたじゃん。
達也と別れて正解だって。
達也の浮気症は治んないしどうせまた傷つけられるだけだって。
どんなに信じてもきっとまた裏切られる日が来る。
嘘。そんなの言い訳
今の今まで忘れてたくせに。
こんな時に叶恋の口実にするなんて最低最悪だ。
だけど分かっているのに、自分を止められない。
ナナごめんね。
本当にごめん。
ナナに嘘をついた罪悪感を抱きながら、達也の待つ公園に向かって歩き出す。
ーねくすとー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。