保健室までもふもふの羽を敷いた背中に乗せてきてもらった。
正直、今座っている保健室のベッドより乗り心地はよかったな。
信志先輩はにかっと笑ってから保健室を出て行った。
そのままベッドに横になる。
特にやることもなくぼーっとしていると、
さっきの出来事を思い出す。
窓の外から校庭を見る。吹き飛ばされた女の子はいなくなっていた。
そうして心配になりつつ窓の外を見ていると、
急に保健室の扉が開いた。
びっくりして変な声を出してしまった。
静かな場所で急に音を立てるのはやめてほしい。
知らない人に聞かれていたらしい。
めちゃくちゃ恥ずかしい……。
楠美先生は焦げ茶くらいの短髪に、
保健室の先生らしく白衣を着ているのだが、
何故かその下に見えるのは茶色い着物だった。
先生が手をパン、と叩いて鳴らすと、
急にその手から煙が吹き出し、先生を隠してしまう。
そして次に見えたときは、
白衣の下は違和感のないパンツスーツになっていた。
先生は私の足を確認して、
棚から塗り薬を取り出すと、
私の捻ったところに塗ってくれた。
そんなものいるわけ無いと思ったけど、
実際襲われたら、もう信じるしかなかった。
言われてみれば、信志先輩からしか聞いたことないし、
進路指導のときも、高校の情報を貰うまで時間がかかっていた。
先生が話している途中で、チャイムが鳴った。
そのチャイムも、なぜか半音ずれていて不気味だ。
まだ始まってすらいない高校生活に不安を覚えつつ、
だるそうな信志先輩と、妙に姿勢よく歩く療先生の後ろをついていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!