入学式までいろいろあったけど、
式自体はすぐに終わった。
というか、退屈な話を聞いている間、
周りを見ていたら終わってたんだけど。
明らかに人ではないのがいて、
どう見てもお化け屋敷なんだけど、
流石に慣れてきた。慣れてしまった。
面倒な集会で退屈しないのはいいことだけど……。
この学校はクラスが三つあって、私は一年ハ組らしい。
歩きながら、周りの子をチラリと確認する。
女子は女の子から見ても美人だったし、
男子もアイドルみたいにイケメンばっかり。
さっきのお化けお化けしてるような子はいなかった。
でも、見ているとだんだん違和感が出てきた。
よく見ると、やたら同じ顔や髪型の子が多い。
同じ人の写真をいっぱいコピーしましたみたいで、
さすがに気持ち悪い。
なるべく顔に出さないように気をつけながら教室に入る。
眼力のある、いかにも熱血って空気の先生が私たちの担任らしい。
ちょっと苦手かも?
先生の言葉で教室がざわつき始める。
そして、先生の頭から角が生え始めた。
気がつけば、美男美女の集まりだった教室は、
ホラー映画の楽屋裏のような状態になっていた。
ドン! と猛先生がいつの間にか持っていた金棒で床を叩く。
大きな音に合わせてみんなが教卓に注目した。
クラスの視線が私に集まる。
校庭で襲われた私としては、体が強張っていく。
この視線の中で急に言われると、
何を言い出せばいいのか分からない。
必死に言うことを探していたときだった。
後ろの席から声をかけてくれたのは、
濃い藍色の髪に、やたら白い肌の男の子。
おでこにはなぜか、
風邪をひいたときに熱を冷ます冷却シートを貼っていた。
彼は私に向かって手を差し出してきた。
オブラートに包んだけど、
本当は人気のない所巡りをするのがマイブームだった。
クラスメイトから逃げてきた名残だけど、
人気の無さそうな場所を見つけるのが得意になっていた。
誇れた特技では無いのが悲しいけど。
この人も私を食べようとか言いだすんじゃ……。
それとも他にも何かあるんだろうか?
彼はにこにこしながらこっちを見ている。
とりあえず話せそうな人ができたでいいんだろうか?
自己紹介から進むオリエンテーションの中、
彼のおかげで冷静になれた私は、
他にも話かけやすそうな妖怪を探すことに集中することにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。