いきなりやってきたその子は、
蛇のよう、ではなく本当に縦に細い蛇の眼で私を見つめる。
彼女の棘のある言い方に面を喰らいつつ、
蛇の目がギョロギョロと動くのを見ているしか出来ない。
二人のなんてことのない反応が、
今の私にはすごく助かっていた。
何でもいいから、その視線から外れたい。
でも、今目立ったらダメ。
橋羽さんはキッと私達をにらみつける。
橋羽さんが私を見る。
蛇に睨まれた蛙みたいに、
私の体は強張った。
彼女は視線を外すと、
私たちに背を向けて歩き出す。
チラリと橋羽さんは私を見る。
それだけ言って、
橋羽さんは今度こそ去っていった。
氷室くんが私のほっぺを両手で挟んでいる。
キンと頭まで響く冷たさに驚いたけど、
おかげで周りの様子に気がつけた。
大丈夫。
今は頼れる人もいる。
昔とは違う。
今度はきっと大丈夫。
私は放課後に生徒会室へ行くことだけを考えて、
午後の授業を過ごした。
それでも、蛇の視線を忘れることは出来なかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。