第45話

2人だけの朝(二口 堅治)
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2021/12/22 10:21
うん。おやすみ。

電話口で告げる優しいその声は

私の鼓膜に柔らかく響いていく。

少し寂しそうな声。

そんな声がまた寂しさを増強させる。

会いたい気持ちも膨らんでいく。

次の日の学校でまた彼と

おはようと挨拶を交わす。

そんな日常がとても幸せだった。
二口 堅治
おはよ。
あなた

ん。おはよ。
あ、賢治、後ろ寝癖ついてる。

二口 堅治
え?あ、まじだ。
直してくる。
あなた

いいよ、ここ座って。

二口 堅治
え?
あなた

私、今日アイロンあるから。
直したげる。まだ誰も来てないし。
ほら、早く座って。

二口 堅治
うん…
プラグを繋いでアイロンを温めて

ぴょこんと跳ねた彼の髪に熱を通していく。

跳ねていた髪は落ち着いて毛流れに沿って収まっている
あなた

はい、できたよ。

二口 堅治
ん。あんがと。
次にそのまま自分の前髪に熱を通して

毛先を巻いていく。

その様子を横からじっと見つめられる。
あなた

…なに。

二口 堅治
んーや。なんでも。
あなた

そんな見られると恥ずかしいんだけど。

二口 堅治
いや別に、器用だなーって。
女って毎日これやってんの?
あなた

そうなんじゃない?

二口 堅治
ふーん。すげーな。
あなた

珍しいね。賢治が人のことを褒めるとか。

二口 堅治
別に、んなことねぇだろ。
俺が人の心ねぇみたいな言い方しやがって
あなた

ごめんって。
…よし。こんなもんか。

くるんっと巻かれた毛先を少しだけ指でほぐし、

毛流れを整える。

そして彼の方を向き、わざとらしく尋ねた。
あなた

どう?可愛い?w

二口 堅治
…ふっw
あなた

なんで笑うの。質問してるんだけど。

二口 堅治
…あぁ。可愛いよ。
やっぱ俺の彼女だ。
あなた

っ...////

二口 堅治
顔赤くしちゃってーwww
何、照れてんの?ww
あなた

照れて悪いかよ…///

少し拗ねたようにそう返す私に

優しく口付けをして自分の席に戻っていく。

一瞬にして顔に熱が集中していく。
あなた

賢治のばかっ…///

小さくつぶやく声は彼には届かなくて

朝の柔らかい日差しに照らされた彼の髪が

光を受けて茶色に輝く。

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