第40話

悪夢(黒尾鉄朗)
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2021/07/02 13:41
黒尾 鉄朗
はぁ〜…
あなた

どうしたの?ため息ばっかり…
疲れてるね…大丈夫?

黒尾 鉄朗
あぁ。うん。
あなた

そ、そう…無理はしないでね?
私も心配になるから…

黒尾 鉄朗
お前のせいでこっちが無理してんの。
あなた

……え?

黒尾 鉄朗
お前の分の金を稼がなきゃ
生活できねーだろ。
なぁ。わかるか?
あなた

ご、ごめっ…

黒尾 鉄朗
ごめんじゃすまねぇだろ。
はぁ〜…もう出てってくれ。
あなた

え…いや、でも…

黒尾 鉄朗
出てけ!!
あなた

わ、わかった…(泣)

あんなに怒った鉄朗を見たのは初めてだった。

大好きだったのは私だけなのだと思い知らされる。

あまりの怖さに目に涙が滲む。

私は家を飛び出した。

外は大雨。空は真っ黒な雲の中で白い雷が光る。


" お前のせいでこっちが無理してんの。"

" ごめんじゃすまねぇだろ。"

" 出てけ!!"


彼に言われた言葉がグサグサと心に刺さり、

何度も頭の中で鮮明に再生される。

ケータイも財布も持たずに家を飛び出してきた私は

誰かに連絡する術もなければ食料を買うお金もない。

大雨の中をフラフラと何日も歩き続け、

空腹に耐えきれずその場に座り込む。

その時だった。
鉄朗ったらぁ〜♡
もうっ♡えっち♡
黒尾 鉄朗
誰も見てねぇし大丈夫だよ。ww
わかんないでしょぉ?♡
そこには身長が少し高めな女の人と

同じ傘の中でいちゃついている彼の姿があった。
あなた

てつ…ろ…?

黒尾 鉄朗
はぁっ…?!なんでお前がっ…
だ〜れぇ〜?この子。
あなた

私の…彼氏に…何してるの…

は?
あんなに酷いことを言われて

こんなにボロボロになっていながら

それでも彼のことが好きで諦めきれなかった。
あなた

離れてよ…私のっ…
恋人なのっ…

彼女は私よ。
あんたみたいな汚れた女、
鉄朗が好きになるわけないでしょ。
ねっ?♡
黒尾 鉄朗
お前とはもう別れただろ。
ついてくんじゃねぇよ。鬱陶しいな。
やだぁ、鉄朗くんこわぁい♡
黒尾 鉄朗
お前には言わないから大丈夫♡
やーん♡大好き♡
黒尾 鉄朗
じゃ、そういう事だから。
もうついてくんなよ。
あなた

そ…んな…まって…
行かないでよっ…1人に…しないでっ…

女と腕を組み、ぴったりとくっついて歩いて行く。

2人の姿がどんどん小さくなっていくにつれて

弱まっていた雨がまた大雨へと変わっていく。

涙か雨かも分からない雫が頬を伝って流れていく。

声を上げて泣くことも出来ず、私はその場に倒れ、

そのまま意識を手放した。

暗闇の中で何度も名前を呼ばれた。

その声がする方に必死になって走った。

すると小さな光がポツンと見え、手を伸ばす。

掴んだと同時に司会は光で真っ白になった。
黒尾 鉄朗
あなたっ?!
はぁ〜…良かったぁ…
目を覚ますとあの時酷いことを言って

知らない女と離れていった彼が

泣きながらきつく抱きしめてくれた。
黒尾 鉄朗
ずっと苦しそうにしててっ…
泣いてるしっ…どんだけ呼んでもっ…
起きねぇからっ…怖かったっ…(泣)
あの怖かった出来事は全て夢だったのだ。

今、私を抱きしめてくれているのは

私が知っている優しくて大好きな彼。
あなた

助けてくれてっ…ありがとっ…(泣)

黒尾 鉄朗
ごめんっ…不安にさせてたよなっ…
起きてくれてよかったっ…
あなた

てつろ…?(泣)

黒尾 鉄朗
ん…?(泣)
あなた

もうっ…嫌いって言わないでっ…
出ていけなんて…言わないで…

黒尾 鉄朗
ばかっ…
そんなこと言えるかよっ…(泣)
あなた

浮気しないでよっ…
絶対だからねっ…

黒尾 鉄朗
俺、そんな器用じゃねぇよ…w(泣)
2人は不安を埋め尽くすようにキスをした。

隙間がないようにピッタリとくっついて

お互いの温もりを感じ合いながら抱きしめあった。

その後、少し落ち着いてから、

私は夢の内容を全て話した。
黒尾 鉄朗
絶対そんなこと言わねぇしww
てか、好きなやつに言えねぇし。w
と少しはにかみながら言う。

夢の内容を思い出すと、それだけで涙が滲んでしまう。

その度に涙を拭って優しくてキスをしてくれる。

彼の鼓動と体温が心地よくて眠気が襲う。
黒尾 鉄朗
もう寝るか。
あなた

うん。

黒尾 鉄朗
次は嫌な夢を見なくていいように…
そう言いながら彼の硬い胸に抱きしめられて眠りにつく

寂しさはいつの間にか消えていて、

胸に暖かいものが残っていた。

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