なにか肝心なことを私は忘れた。
お医者様は
りりぃさんが忘れた記憶は忘れてもいいこと
だったんですよ
だから思い出さないで忘れてください
でも私には忘れちゃいけないことだと
思ってる
彼、雪下ひろ
彼は悲しそうな顔で私に目を向けた
私は察したきっと私は
彼のことを忘れているのだろう
でも彼との間に何があったのかなんて
わからない
どれだけ知ろうとしても
誰にも入れない雪下ひろの
間。
私は雪下ひろの間に入れたのか
いつも冷たい彼は私には優しくしてくれた?
でもさっき
彼には彼女がいた。
私はその彼女を知っている
私が記憶をなくしたのは交通事故に会ったから
だけど私はただ走ってた訳では無い
走りたい気持ちでメイドに言い訳して
家を出たけど誰かに押されて道路に飛びてた
明るいフラッシュが私の目にあたり
眩しさを今でも覚えてる
あの頃を思い出すと恐怖にしか
わかなくて
押された犯人は彼の彼女
私はベットから出て窓に手を添えて
下を見ると彼がいた
バシッ
お父様は私の頬を思いっきり叩いた
トンっ
そんな効果音みたいな
音で両親は去っていった
後ろを振り返ればそこには
彼がいた。
彼との思い出は真っ白だったのに
私とあなたは恋しあってたんだね
そして同級生で体の関係があったんだね
記憶は必ずしも
戻るとは限らないだけどその可能性を
信じなきゃ何にもできないでしょ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!